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市場独裁主義批判 (シリーズ社会批判)

価格: ¥1,890
カテゴリ: 単行本
ブランド: 藤原書店
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原題は『向かい火』 ★★★★☆
『市場独裁主義』と題されてはいるものの、いろんな文脈の中でひとつひとつが労働者、弱者を支援するために書かれたエッセイの集成です。ブルデューという社会学者がこれほどにまで積極的に社会参加を行ったことに畏敬の念をぼくは覚えました。しかし、その反面、実証的な研究を総合的な理論へとまとめあげるブルデューのほかの著書と比べると、ジャーナリスティックなこの本には理論的な魅力はあまりありません。その点で『向かい火』という原題を『市場独裁主義』という邦題に変えてしまった翻訳者の作為に対して星ひとつ減点して、星四つとします。
私たちの国の状況をも語るテキスト ★★★★★

 「市場の論理」という単一思考に支配されているこの国の市民、とりわけ「ニュー・エコノミー」イデオロギーの犠牲になって解雇されたり、リストラの脅迫にさらされている人々、特に21世紀の世界を生きなければならない若い人々にこの『市場独裁主義批判』と『メディア批判』という「紙の爆弾」を読んで欲しい―加藤晴久「訳者解説」から

 本書は、ピエール・ブルデュー(Pierre Bourdieu, 1930〜2002)の監修したシリーズ<社会批判(la critique sociale)>の1冊で、原題は「向かい火」(Contre-feux)だそうである。この標題の意味は、「いまや燎原の火のごとく燃え上がるネオ・リベラリズム」(読者へ)に対してブルデューが放った言葉の「向かい火」ということを表している。
 それはまた、「ネオ・リベラリズムの衣をまとい、社会保障制度や労働法など、過去の政治闘争と労働運動が獲得した成果(=社会的既得権益(引用者))を破壊しようとしている保守革命」、「(国民)国家の弱体化と公共財の商品化」(日本の読者へ)などを進めるグローバリゼーションに対しての“闘争宣言”でもあるのだ。
 
 当書は、1992年から98年にかけてブルデューが行った<社会参加>の軌跡である。具体的には、『ル・モンド』紙のインタビュー記事や日刊紙等への寄稿文、各種シンポジウムやドイツ労働組合連盟等の労働者組織、さらにはリヨン駅でスト決行中の鉄道労働者への発言なども収められ、労働者等に対する「弾力的搾取」なども厳しく批判している。
 最後に、ノーム・チョムスキー(Noam Chomsky)は同書について、「今回もまたブルデューは正しい標的を選び、いつものように鋭く啓発的な発言を行っている」と語っているわけだが、本書の述べる文脈は、決して特殊フランス的なものではなく、「実は私たちの国の状況をも語っているのである」(訳者解説)。