インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

中国農民調査

価格: ¥2,900
カテゴリ: 単行本
ブランド: 文藝春秋
Amazon.co.jpで確認
共産党なのか、史的中国なのか ★★★★★
 現代に取材したルポルタージュの筈なのに、明清時代の話を読んでいるような気になってきます。中央は度々禁止令を出すが末端になるにつれて霧散してゆく。よく言われる、上に政策あれば、下に対策あり、ではない。中央の指令に対して地方が反抗しているのではなく、中央の指令自体が、「何かを禁止すれば、その穴埋めとして別の搾取が行われる」という、あたりまえの、構造的な対策となっていないことに問題がある。つまり中央の指令とは、綺麗ごとを口にしているだけで、単なる伝言ゲームを行っているというわけです。行政は伝言ゲームをしているだけで、農民が送った告発書が、たらいまわしにされた挙句、当の告発された当人に対処命令が行く、というブラック過ぎる世界はまるでSF小説を読むよう。最近読んだ、明代末期の社会を描いた「万暦十五年―1587「文明」の悲劇」を彷彿とさせる部分も多く見られます。

 思うに、「共産党支配」が19世紀的な、あるいはそれ以前からの封建的な停滞に社会を置いているのではなく、20世紀に猛威を振るった共産主義という中国社会に外部から影響を与えた横糸が弱まり、「史的中国社会」という縦糸が色濃く出てきたのが、改革開放以来の中国社会なのではないでしょうか。共産党にも問題があるのは勿論ですが、共産党が無くなったところで、この史的中国社会の本質は簡単には変わらないのではないでしょうか。

 これを「遅れている」などと断じるのは簡単ですが、本質が、「史的中国社会」にあるのだとすると、事態は一層深刻なのではないかと思われるのです。

 本訳書は、出版前に雑誌に発表された、3/5程の抄訳版とのこと。是非全訳も出して欲しい。また、法令や事件の年表が付いていると、よりわかりやすくなったかと思います。
いまは21世紀なんだけど ★★★★☆
いったい彼らにとっての20世紀とはなんだったのだろう??? と、この類の情報に接する度に嘆息してしまう、我が日本は世紀初頭に日露戦争を戦い、続く大東亜戦争を戦いぬき、多大な惨禍も瞬く間に克服し20世紀後半からの反映に連なる現在がある、われわれ日本人と日本は大きく誇っていいのである、われわれは確かに20世紀を生きたのだと、

本書の対象となっている国などはさしずめいまだに19世紀以前で時間は止まったままだ、原因は指摘するまでもないだろう(他のレビュアの方々が詳しく語っている)、1990年前後にソビエト連邦をはじめとする共産党主導の社会主義国家郡はなだれをうつように崩壊した、冷戦構造終了からすでに15年を経過、ご近所の複数の国がかかえる諸問題はすべて同じ原因であることと彼らの胡散臭さに関しては、こころある人は事あるごとに語る必要があるとおもう、「理想」は理想を支えきる技術にこそ保証されるのだと、
中共の抱える最大の矛盾、農民の悲劇に迫るルポルタージュ ★★★★★
  中華人民共和国(中共)では昨今、都市部と農民の地域格差が伝えられて
います。一方で国の政策に不満をもった農民たちの抗議行動がしばしば起こっ
ていることが報道されています。しかしながら、本書には想像を遥かに超えた現
実がありました。共産党本部、地方組織、警察が一体となって税金や公金を搾
取する現実。そして抗議を押さえ込むための目を覆おうような虐待の数々。元来
中間搾取の無い世界を標榜した毛沢東の共産革命は一体何だったのか。他国
のことながら、驚くと共に絶望を覚えました。
  本書は、現代中共の「タブー」に踏み込んだため刊行二ヵ月で発禁処分にな
ったそうです。昨今、中国は将来の成長市場として日本の企業が相次いで進出
していますが、先のソニー製デジカメ問題など一党独裁下の国は大変危険です。
ところで、毛沢東の革命闘争を支え、表面だけのばら色の改革開放政策にエー
ルを送り続けた朝日新聞は、この現実をどう説明してくれるのでしょうか。

中国の火薬庫である農業問題 ★★★★☆
 日本国内人口の7倍、中国国内人口の70%、約9億人が農業に従事しているという。

 本書はその中国農民の(特に安寧省を中心とした)驚くべき実情が赤裸々に描かれている。共産党地方幹部による農民への虐待・搾取は、日本の時代劇に出てくる悪代官でさえ可愛く思えてしまう。そこには血も涙もない悪ばかりだ。

 文中に下記のような文章がある

「1990年から2000年のたった10年で、わが国が農民から徴収した税金の総額は、87億9000万元から一気に5.3倍の465億3000万元に急増した。(中略)都市の住民の収入が農民の6倍という状況で、農民が納めた税額は都市の住民の4倍なのである。」

 数字は、中国農民の納税実態が徴収というより搾取という表現が的確であることを雄弁に語っている。

 本書には多くのページを割いて、現状の事態を打破すべく行われている農業改革の様子を記述しているが、具体的な成果はなんら上がっていない。

 改革を行えば当然行政改革となり、公務員を削減すること=共産党員を削減することにつながる。都市の住民が農民の6倍の収入をもっても、共産党が人民を統治するのに都市でろうが農民であろうがそのコストは均一なのだ。その事実一つでも、中国が農業の改革に成功することは実現不可能であろう。

 本書は中国の未来を占う上で、欠かすことのできない良書である。

 本書を読み終え、天安門事件学生指導者の一人で今は米国に亡命中の王丹氏の言葉を思い出した。

「党の将来と国益のどちらかを選ばなくてはならないとき、共産党(中国)は常に党を選ぶ」

 
渾身の力作 ★★★★☆
 著者夫婦が私財を投げ打って調査執筆した渾身のルポルタージュ。書かれている事柄はまるで小説のようであり、実際にこの世の中で起こっている出来事とは思えない。

 この本を読むと、中国の経済発展がいかに「張り子の虎」か、農村部の貧農たちの犠牲のもとで成り立っているか、がよくわかる。日本の左派も、真に人権や平和を希求するなら、共産党政権に擦り寄るのではなく、こうした「虐げられた人々」救済のために立ち上がる、ぐらいの気概を持って欲しいものである。

 ちなみに本書は、やはり中国国内で発行されたことからか、「頼みの綱」を共産党政権指導部に託しているが(それでも発禁になったわけだが)、それはどう考えても「叶わぬ望み」であることも申し添えておく。