映画の脚本?
★★☆☆☆
カーチェイスも銃撃戦も文章だと迫力がない。もともも映画化を狙った脚本のように思える(映画化されて著者の目的は果たされているのかもしれないが)。
ストーリー展開としてももう一段の捻りが欲しいところ。最後に大きな展開があることは途中から明白だし、大きな展開があるとすれば題名にもなっているBOBBY Zが生きていることであると想像するのは"THE DEATH AND LIFE OF BOBBY Z"という題名からしてもそんなに困難なことではない。
ティム・カーニー、かっけぇ
★★★★★
作品の持つ話運びのテンポの良さと、無駄がなく強弱の効いたリズムのいい文章が好き。
伝説的なサーファー、麻薬王、海兵隊あがりの泥棒、替え玉、ミステリアスな女−。
下手な人が扱うと、陳腐になりがちな設定も、ウィンズロウの手にかかると、最高に格好良い西海岸の舞台が見えてくるからさすが。
最初から最後まで興奮して読みました。
お気に入りの1冊です。
ニール・ケアリーのシリーズとはまた違った爽快感
★★★★☆
刑務所を出たり入ったり、海兵隊あがりの中途半端なコソ泥ティム・カーニー、ついには服役中に人を殺してしまう。これで終身刑は確実、さらには殺した男の仲間に狙われ、塀の中にいながら命を落とすのはもっと確実という困った状況に陥ったとき、救いの手を差し伸べたのは麻薬取締捜査官。条件は、ティムの容姿がカリフォルニアの麻薬組織の帝王ボビーZに瓜二つなことから、その替え玉になることだった。ボビーZに化けたティムの前に現れる、メキシカンマフィアの顔役、メキシコの麻薬王ら悪党の面々、そして謎の美女とその連れている男の子・・・。ハンパ者のティムは無事ボビーZの役を演じ続けることができるのか?
銃撃戦あり、逃走劇あり、タイトルの「気怠く優雅」とはまったく裏腹な内容、読者を飽きさせません。最後は、本作を読んだ者なら誰でも望むようないかにもな終り方ではありましたが、『ストリート・キッズ』など著者の代表作のニール・ケアリーのシリーズとは別の爽快感を味わえました。
筆者のセンスはさすが
★★★★☆
D・ハンドラーの小説を思わせるお洒落で都会派な「ストリート・キッズ」の筆者が、カール・ハイアセンやエルモア・レナードのような疾走感のある悪漢小説を書いたら・・・やっぱりセンスあふれる作品に仕上がった。
特に後半のテンポのよさ、物語の小気味いい収束の仕方は、タランティーノやガイ・リッチー監督のギャング映画を見ているよう。
ただ、極めて個人的な好みで文句をつけるとすれば、「〜した。」「〜だった。」という過去形をほとんど使わず、「〜する。」という現在進行形が続く文章は、ちょっと読みにくい。
これは原書がそうなのか、それとも日本語の時制の問題か・・・。
まあ、この問題点も、後半になってくると気にならなくなるほど話が面白いんですが。
すごく映画的な小説
★★★☆☆
ドン・ウィンズロウの作品は、ストリート・キッズ以来、出版されたら片っ端から読んでいます。
内容については実際に読んで判断してもらいたいので、そこに関しては書き込みしませんが、個人的に思う他の作品との違いは、良くも悪くも「より映像的」な点。
余計なものを省いた読みやすい文体からは、各シーンがまるで映画のように容易く浮かんできます。
しかし、プロットというかシナリオ(というと言い過ぎですが…)を読んでいるような素っ気なさで、余韻に乏しい感じがしました。
変に格好を付けた文体(訳者のセンス?)も少し気になりますが、二転三転するストーリーは面白いです。
映画化されたら絶対見に行きます。