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あ・じゃ・ぱん!(下) (角川文庫)

価格: ¥900
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店(角川グループパブリッシング)
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記念碑的作品かもしれない ★★★★★
 相当な量の作品。読むのに苦労するところもありますが、いろいろと伏線が張られたりギャグが混ざったりしているので、何とか読み切れるでしょう。
 アメリカに渡った野球選手のシゲオ・ナガシマの「長嶋語」には爆笑してしまいました。
 ここまで小説としてちゃんと成立する虚構世界を、数々のユーモアを交えながら作ってしまう作者の力量には感嘆します。
 将来、日本にはこんなに凄い小説があったんだと、誇れる小説の一つかもしれません。
 この小説は文学よりも漫画とかに近いのかもしれません。詩的なイメージというよりは、リアルなイメージの中にパロディとしてのギャグを挟んでいるから。
 できることなら、何度も繰り返し読んで、どこがどういうパロディや引用となっているか、どの伏線がどのようにあらわになるのか、追求したくなる小説です。一回読んだだけでは、この小説の豊かさと奥深さは分からないと思います。
これぞ良質のパロディ小説 ★★★★★
なんと言っていいんだろう、こういう小説を良質のパロディというのかな。
体裁的には、ハードボイルドミステリやスパイ・アクション小説で、なおかつ、SF的な歴史改変小説。単純にその面白さを楽しむこともできる。

しかし、この小説は、それ以上に、戦後日本の社会状況を痛烈に風刺している。社会批判的な文言はほとんどないんだけど、戦後の日本が歩んできた歴史の道のり、日本社会の変容を面白おかしく、かつ、ピリリと辛口に描いているのがすごい。

うーん、矢作俊彦の小説ってこんなに面白かったのかなぁ。見直した。
総合小説! ★★★★★
矢作さんはハードボイルドな作家さんだと私は勝手に思ってましたが、この作品は凄いの一言です。ハードボイルドであり、偽史パラレルワールドであり、推理小説であり、パロディであり、皮肉たっぷりの批評小説でもあり、エンターテイメントでもあり、無いモノがありません!ってくらいのてんこ盛りです、ボリュームももちろんありますが、かなり引き込まれる物語です!


よく描かれる第2次世界大戦後の「日本は負けなかった」とか「地下にもぐってのゲリラを繰り広げる」とかいう展開ではなく、なんと日本が真っ二つに分断統治されて、富士山は原子爆弾の投下により噴火、現在の富士山とは全く違ったものとなり、東側は共産圏、西側が自由民主主義という昔のベルリンのような状態になっているところへ、父親の影響から日本語を学び、日本の文化を勉強した黒人の「私」が西側のCNN特派員として東側に残って活動する大物・田中角栄にインタビューするために日本を訪れるところからはじまります。もうこれだけでもツカミとして素晴らしく惹かれる展開を、さらに軽快な文体で、しかも異端者(黒人である「私」)が日本を訪れることで感じられる違和感をズレとして笑わせます。当然西側に首都があるわけですから大阪が首都で共通語が関西弁、東京弁は東京官語と言われて東側の言葉になっています。このギャップがまた可笑しい。



恐らく1番今までの矢作作品の中で1番近いのは「気分はもう戦争」なのだと思いますが、それを遥かに凌駕するボリュームと構造と密度です!!パロディであり、パラレルワールドであり、批評と皮肉の効いた見事な小説です。そのうえいつもの矢作さんのキメ台詞も、上手い比喩も、ハードボイルドもありなのですから、まさに総合小説と言っても良い完成度です。言葉を選ぶセンスも相変わらず素晴らしく(誰がダイハツ サイデッカーというネーミングを考え付くでしょうか?)最高です。


私が1番面白いと思ったのは、矢作 俊彦さんという作家が今までの作品から感じられる矢作作品を通してのイメージを利用した上で様々なものを「これはフィクションですから」という顔をして極めて鋭い考察の上に批評(皮肉たっぷり)しているところがある、という事です。しかも多重構造のようになっていてどうとでも読めてしまいます。ただ単に面白おかしくも読めて、フィクションの世界の出来事なのに非常に良く知っている名前を混ぜ、中にはちょっと調べてみたりしないと分からない事や、臭わせる程度の不確かなものを入れる事でその人物の傾向のようなイメージを上手く醸し出し、それを利用した上で皮肉ってみたり、立場を気が付かせてみたり、ともう自由自在にたくさんの登場人物を描き、動かしひとつの世界を成り立たせています。しかもその世界を見た後では、今のこの世界をどこか視点をずらして可笑しくしてくれます、もしくは気が付かせてくれます。



アテンション・プリーズ!ちょっと複雑だけれど、ゼッタイにハマれる笑える小説、たくさんのトピックや元ネタが分からなくても楽しめるそんな小説ですから、笑いをもとめる方に、笑いだけじゃないエンターテイメントを求めているちょっと大人な方にオススメいたします!

まだ見ぬ100年後のあなたに。 ★★★★★
かつてジドーシャ雑誌NAVIは本作を「現代日本への悪意を芸にまで高めた」と評した(ように記憶している)。当時のNAVIの編集長はあのスズキさんである。そう、あの。

大文字の「歴史」は時としてもちろん有用なことがある。しかしその時代のリアルな手触りや息吹きを伝えさせようとしても、そりゃできぬ相談である。

本作が語るのはいうまでもなくマガイモノの歴史である。しかしにもかかわらず、いやだからこそ?この時代の日本の手触りが、息吹きが実にリアルに再現されているのだ。ましてや角栄もミシマもナカソネも和田勉まで総出演の豪華キャストである。

昭和の終わりと平成の始まりの日本のリアルな姿がここにある。西暦2000年前後のトーキョー風景を記した矢作の近作「ららら科学の子」とともに、100年後、1000年後のあなたに本書をオススメしたい(膨大な脚注が必要だろうけど)。

偉大なる作家。 ★★★★★
 戦後東日本がソ連に、西日本がアメリカに占領されたという設定のもと、
主役は無論のこと、三島由紀夫、中曽根康弘、田中角栄といった人物が架空の歴史を生きていく。
 幾重にも仕掛けられた虚構の中、戦後への悪意、
歴史への問いが強烈ににじみ出る、まさしく傑出した作品。

 作中のおよそ2/3が引用、借用らしく、作者以外が全てを知るのは恐らく不可能。
中には翻訳文をそのまま使ったところもあるが、訴えられるどころか翻訳者が面白がったとか。
全くのオリジナルでないものを用い、全くのオリジナルを作り出すその手腕には驚嘆するほか無い。