大文字の「歴史」は時としてもちろん有用なことがある。しかしその時代のリアルな手触りや息吹きを伝えさせようとしても、そりゃできぬ相談である。
本作が語るのはいうまでもなくマガイモノの歴史である。しかしにもかかわらず、いやだからこそ?この時代の日本の手触りが、息吹きが実にリアルに再現されているのだ。ましてや角栄もミシマもナカソネも和田勉まで総出演の豪華キャストである。
昭和の終わりと平成の始まりの日本のリアルな姿がここにある。西暦2000年前後のトーキョー風景を記した矢作の近作「ららら科学の子」とともに、100年後、1000年後のあなたに本書をオススメしたい(膨大な脚注が必要だろうけど)。
作中のおよそ2/3が引用、借用らしく、作者以外が全てを知るのは恐らく不可能。
中には翻訳文をそのまま使ったところもあるが、訴えられるどころか翻訳者が面白がったとか。
全くのオリジナルでないものを用い、全くのオリジナルを作り出すその手腕には驚嘆するほか無い。