横溝正史(金田一耕助もの)初読者にお勧め
★★★★☆
資産家の養女で月琴島に住む美女、大道寺智子が島を出て東京に来るのを阻止せんと舞い込む脅迫状、果たしてそれに呼応するかのように起こる連続殺人、そしてその背景には、19年前に島で起きた密室殺人があったという本書、横溝(金田一もの)の初読者にお勧めである。
横溝独特のおどろおどろしさ(例えば『犬神家の一族』や『悪魔の手毬唄』のような)は控えめで、また『獄門島』や『本陣殺人事件』のようなガチガチの本格ものでもないので読みやすく、ヒロイン・智子を中心に謎とサスペンスに富んで面白い。
逆に言うと横溝らしさが薄いので、先に挙げた『犬神家〜』や『獄門島』などのファンは、ちょっと物足りなく感じるかも知れない。
金田一ものベスト5(先に挙げた4作+『八つ墓村』)の次ぐらいに位置する作品である。
島の秘密
★★★★☆
横溝正史の代表作のひとつ。
登場人物も派手だし、ヒロインへの求婚者が次々と殺されていくという展開にも花がある。いくつもの謎が絡み合ったプロットも良く出来ており、優れた作品であることは間違いない。
ただ、トリックはいまいち。いくか使われているのだが、どれもパッとしない。がっくりと脱力してしまうようなものも。
瀬戸内海ではないが、島が主要な舞台となっており、恐ろしさが良く出ている。
横溝の生涯のテーマであった「歪んだ性」の問題も。
トリック・構成が見事!
★★★☆☆
いくつかの事件が複合的に組み合わされて作品が構成されている。背景事情も、それぞれの件で違っている。話の中頃で早くもそのうちの1つの謎解きがされてしまって、おいおいもう種明かしかよ、と思って読みすすめると、隠されていたもっと大きな謎が次々に出てくる。
トリックも、やや古典的ではあるものの、十分練られていて堪能できる。
著者の作品に「推理小説」だけではなく「小説」としても魅力を感じている者としては…
★★★☆☆
横溝正史の作品は、「推理(探偵)小説」としてだけではなく、「小説」としても独自の世界〜それは耽美的であったり、伝奇的であったり、グロテスクであったり、ユーモアだったり、登場人物の魅力だったりと様々だが〜を持つ優れたものである。だから、今の時代も読み継がれているし、繰り返し映像化もされているのだろう。私は「推理小説」と同じくらい「小説」としての横溝作品のファンである。
推理小説としてのこの作品は、詰め込み過ぎの嫌いはあるものの、大小のトリックを駆使した優れたものだと思う。著者の作品に対する批判として、現代においてそれらのトリックが陳腐だとか必然性がないという意見があるが、それを言っては野暮だろう。その時代性と「小説」の中で描かれている舞台とをあわせてトリックの意味を考えるべきだ。著者の推理小説は単なる謎解きではない。
推理小説なので書くことはできないが、混乱した時代が可能にしたともいえる作品中最大のトリックは、その伏線の張り方、謎が解けていく過程とも緻密であり、さすが横溝正史と唸らされるものがある。
しかし「小説」として考えると、この作品は物足りない。ドロドロの世界は著者の十八番だが、それが引き立つのも登場人物に魅力があってこそのはずだ。真犯人はストーリ上そういう描き方しかできないのは止むを得ないにしても、ヒロインの大道寺智子をはじめ、多くの登場人物に魅力が感じられないのがその理由だと思う。
だから、小説的な魅力をあまり感じることができないこの作品を、何度も繰り返して読むことがないのかもしれない。
古典の名作
★★★☆☆
横溝をはじめて読んだが、なかなかに面白かった。この時代の本をこれほど面白く感じることが出来るのだろうから、やはり才能はあるのだろう。
ただ、あくまで昔の話だから、トリックは陳腐