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悪魔が来たりて笛を吹く (角川文庫)

価格: ¥740
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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ミステリーの教科書のような ★★★★☆
解こうとする謎の適度な複雑さ。
読者が捕捉できる程度の伏線の敷き方。
当時の風俗を垣間見ることができる社会描写。
過去と現在、東京と地方を行き来するスリリングな展開。
陰惨な事件ながらフィクション性を前面に出すことによる娯楽性。
そして、厭味が少なく不思議と飽きが来ない金田一シリーズのマンネリズム。

ミステリーの教科書のような作品だが、冤罪かもしれないと言われた帝銀事件とはトーンが違いすぎる。
グリーン家、Y、でもって、悪魔 ★★★☆☆
帝銀事件やら何やらで、ごちゃごちゃしているが、全体的な骨格は、「グリーン家」、「Y」と同じ。一家に秘められた悲劇の内容が、「Y」に比べると劣る。冒頭で死ぬ(自殺だか他殺だか、本当は死んでいないのかはともかく)当主の残した秘密の暴露も、Yのほうが鬼気迫るものがある。(「悪魔」では、犯人自身が最後に暴露することになるので、金田一の苦悩がいまいち。秘密自体の内容も、単に犯人を示唆するにとどまっているし。「Y」では、レーンがそれを見つけてしまうことにより、レーン自身が最後の決断をするわけで、こっちのほうがずっとつらそう。)帝銀事件とそれに関わる一連の話(死んだはずの当主が生きている?みたいな)のは、ないほうがかえってすっきりしたのでは?でもそうすると「Y」とそっくりになっちゃうから、無理やり挿入したのかね?「Y」を読んでなければ、それなりの出来、ということになったのだろうが。。。。。
金田一耕助、動く。 ★★★★☆
『獄門島』をクローズドな空間を舞台にした端正なパズラー(静)とすると、
本書は東京⇔関西と金田一耕助が捜査のために移動する、トラベルミステリ
(動)の色合いの強い作品。

降霊術、密室、集団毒殺(帝銀事件がモチーフ)、亡霊など、ディクスン・
カー(カーター・ディクスン)ばりの趣向が凝らされていて、その趣味の
人にはたまらない一冊といえるだろう。

この作品の一番の謎は「椿男爵と思われる人物の正体」にあり、集団毒殺
事件に関する伏線の張り方はさすが大横溝。本格推理としては物足りない
かもしれないが、没落貴族の悲劇を描くなど、風俗作家としての技量が
いかんなく発揮されていると思う。表紙は相変わらず、怖い。
帝銀事件 ★★★☆☆
 横溝正史の代表作のひとつ。
 帝銀事件をモデルにして書かれたもの。ああ、これが横溝にとって、作品のヒントになったんだなという箇所があり、執筆の跡がたどれたりして、なかなか面白かった。しかし、内容はまったくの別物で、金田一の活躍する本格ミステリに仕上がっている。
 旧華族、美人の奥方、黄金のフルートと、道具立てがそろっている。そこに、横溝お得意の味付けがされているのである。陰惨な血の問題、金田一をあざ笑うかのように跳梁する犯人(いつものことだが)と、ファンなら満足できること間違いない。
 ただ、本当に傑作かというと、ちょっとためらうものがある。
「自選ベスト10」では6位だが... ★★★☆☆
本書は推理作品としては「凡作」である。金田一は何一つ推理しておらず、事件が起こり謎があり、真相を説明してはいるものの、真相に至るまでの過程についての説明がないに等しい。
(まさか、「ウィルヘルム・マイステル」のおかげですよ」と美禰子に述べていることを推理だとは、誰も思うまい。)
例えば玉虫伯爵殺しを例にとると、なぜこの人物が犯人であり、どうしてこのような方法で密室が構成されたのがわかったか、という説明がなく、単に事実としての真相を語っているだけであり、全体がこのような調子なので、本書には推理作品としての価値はない。

では物語の面白さはどうかというと、本書は私の好みには合わないので「★3つ」。
好みに合わない理由だが、単に「暗くて救いのない物語」がキライということだけではない。それなら『夜歩く』もそうだが、私は『夜歩く』は『八つ墓村』と同じくらい面白い作品だと思っている。
(にも関わらず『夜歩く』が「★3つ」なのは、アンフェアな記述が多いため)
だから好みに合わないというのは、本書は分厚いばかりで余計な描写が多く、遅々として物語が進展しないことに退屈を感じていたからだと思う。

なお、作者は本書を『真説 金田一耕助』の中で、金田一ものの自選ベスト10の第6位としている。
正しくは、田中潤司が選んだベスト5(1.獄門島、2.本陣殺人事件、3.犬神家の一族、4.悪魔の手毬唄、5.八つ墓村)を「妥当なもの」とした上で、次にくるものとして本書を挙げている。
ただ、次の7位に思い入れがあるという理由で『仮面舞踏会』なんかを挙げており、参考にならない。
作者の思い入れとそれが傑作であるかは別問題で、結局、その作品を面白いと思うかどうかは、作者ではなく読者が決めることである。