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悪魔の手毬唄 (角川文庫)

価格: ¥740
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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読み継がれていくことを願って ★★★★★
 はっきり言って、もう「古典」であろう。映画を見てそれでおしまい、という人も多いのではないか。それではかなりもったいないと思うので、あえて書く。レビュアーは本格の愛好家が多いようだが、あれこれ突っ込みどころはあっても面白いよ、これ。もうこういう雰囲気を出せる作家は出ないだろう。本読みがいる限り消滅することはないと思うが、あまりにもマニアックなレビューが多いので心配になった。映画は、できたら昔のヤツ(岸恵子さんが出る方ね)を見て、それから原作も読もうね。
横溝正史、「最後の傑作」 ★★★★☆
本書は昭和32年〜34年にかけて執筆された、作者「最後の傑作」であり、以後の作者の作品には傑作と呼べる作品はない。
作者はヴァン・ダインの『僧正殺人事件』のような童謡殺人を書きたくて、かつて『獄門島』を書いて作品については満足したが、「童謡殺人事件という意味では、わたしはまだまだ物足りない思いをもっていた」とのことで、深沢七郎の『楢山節考』をヒントに、ストーリーに合う手毬唄を創作して組み立てたのが本書であるということが、旧版巻末の解説に記されている。

そうして完成した本書は、文字通り「手毬唄」のとおりに殺人が起きる作品で、いくつも交錯する謎、作品全体に漂う不気味なムード、構成の見事さ、謎解きの論理のいずれにおいても、過去の名作群にひけをとらない出来映えである。
とくに泰子殺しの際、滝つぼに置かれていた枡と漏斗から犯人に見当をつけたという金田一の推理には、非常に感心した。
ただ、それだけに、逆にその後に続く連続殺人を阻止しなかった金田一の行動には納得できない。一言、「念のために、○○に見張りをつけてください」と警察に頼むだけで間に合ったはずである。

それと、本書は細かな部分できめ細かさに欠けている。
泰子殺しの際、泰子と「おりん」は桜の大師の裏側を通る間道を、金田一と磯川警部は表側を通る本道を歩いていたのに、「もう少し足をはやめていたら、泰子と老婆に出会っていたかもしれない」との矛盾する記載が見られる。
他にも、辰蔵が「なぜ六道の辻から、桜の大師のうらへ通ずる間道を利用しなかったのか」と、二回も思わせぶりに書かれているのに、結局その解答はどこにも記されていない。

また、本書の舞台である「鬼首村」は兵庫県と岡山県の県境の村で、『夜歩く』の後半の舞台と同じ名前だが、そこは岡山県と鳥取県の県境にある、八つ墓村の向こうの別の村である。(金田一は『夜歩く』の事件の後、八つ墓村に立ち寄ったと『八つ墓村』に記されている。)
だが、別の村であるとはいえ、金田一は『夜歩く』で既に鬼首村という名前を知っているので、なのに「これ、何と読むんですか。珍しい名前ですね」と磯川警部に聞いているのもおかしな話である。
パズラーとしては? ★★★★☆
 世評の高い作品ですが、パズラーとしては問題がある思います。再読してみると、犯人が童謡殺人を行う必然性が薄いという点が気になります。その辺を差し引いても、犯人の行動に無駄がありすぎて、どうも納得がいかない。都筑道夫氏の言葉ではありませんが、「昨夜の本格」の典型です。パズラーでなく、スリラーとして読むべきでしょう。そう割り切ってみると、中々捨てがたい。かなりの登場人物がでてきますが、巧みに書き分けていて小説家「横溝正史」の最高の仕事というひとがいるのもうなずける。

 もっとも、パズラーとしては、問題がありすぎます。『悪魔の手鞠唄』が先行作品として意識したヴァン・ダインの『僧正殺人事件』がパズラーとして問題があるのと同じ結果に陥っています。『悪魔の手鞠唄』『僧正殺人事件』はともに詩や歌の通りに人が死んでいくサスペンスを楽しむべきでしょう。もっとも、『僧正殺人事件』は犯人像の異常性、『悪魔の手鞠唄』は現在進行形の事件と20年前の事件の繋がりを探るところと見どころに違いがあり、その点を読み比べるのも一興かと・・・・・
悪魔の所行 ★★★★★
 金田一シリーズのなかでも傑作と言われる一冊。
 読んでみて、確かに納得させられた。怪奇趣味、意外な犯人、ミス・ディレクションの巧みさ、あっと驚く真相と、どれをとっても申し分ない。
 横溝作品には、いまいち冗長なものも多いのだが、本書は飽きずに読むことが出来た。
 しかし、良く言われる金田一の無能さも実感。犯人が分かってるんなら、殺人を防ぐ努力をしてよ。
文句なしによい、そして怖い… ★★★★★
彼の長編推理の中でも一、二を争う怖さです。
岡山と兵庫の県境、鬼首(おにこべ)村で起こった
むごたらしい殺人事件。
そして20年後に再び起こる連続した惨劇。
さらに殺人の背景に潜むおどろおどろしい男女の関係。

殺人のトリックも鮮やかで最後までに読者に犯人を
悟られないようなつくりになっています。
普通の人だと20年前のある事象しかわからないでしょう。

でも、最後はなぜか悲しいのです。
男女の関係のもつれの憎しみはこんなに悲しいものを生み出すのかと…
とにかく、最後は切なくもあるのです。