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本陣殺人事件 (角川文庫)

価格: ¥660
カテゴリ: 文庫
ブランド: 角川書店
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世間から隔絶された村、もの言わぬ人々、呪われた名門一族…… ★★★★☆
世間から隔絶された村、もの言わぬ人々、呪われた名門一族……

金田一作品に共通するこの雰囲気が顕著にあらわれつつも、
初期作品らしく、後々に見られるようなこってりした文体ではなく、
素直な文章と、複雑な心理描写が、トリック以外にも見せ場を大いに盛り上げています。

新婚初夜、離れで起こった血みどろの密室殺人を扱った『本陣殺人事件』
思い込んだ、あるいはそのように追い込まれた人間の残忍さ・教房を巧みにを描き出した『車井戸はなぜ軋る』
どんでん返しが二重三重に張り巡らされている『黒猫亭事件』

私は『車井戸』目的で購入しましたが、他の作品もすばらしいです。
派手なトリックはありませんが、心理的なひっかけが多彩に用意されていて
気づかないうちに「盲点」に入り込んでいることに気づかされる、とても興味深い3作品です。

もちろん、当の金田一のツメの甘さも存分に味わえます(笑)。
これこそプリンシプル ★★★★★
金田一耕助の初登場作品にして、戦後本格の幕開けを飾ることになる横溝の代表作だ。

土俗的で因習めいた舞台設定が醸し出す独特の雰囲気と、それを加速させ際立たす異様な
登場人物の配置。そして、それは取ってつけたものではなく、優れた人間観察による裏打ちが
あるのは歴然で、特に、やりきれない想い、報われない想いを胸の奥底にこだまさせている
繊細でとことん弱く、それでいて病的にストイックな人間を描かせたらあまりに天才的。。
そして、従来密室自体を構成しにくいと謂われる日本家屋で、これだけの和風大仕掛けを
創案した気概。あくまで本格、これでもかというぐらい本格に徹した主義・信条が見事。
本作が規範となり才能ある追随者が続き、確乎とした流れが出来た。まさに源泉であり原点。
これを読まずして何を読む。必読。
20年の遅れを一気に取り戻した記念碑的作品 ★★★★★
本書は昭和21年(1946年)に発表された、おそらく日本で最初の本格推理作品(それまでの「変格」推理作品とは違って)で、横溝自身が本書とほぼ並行してあるいは本書の後に「蝶々殺人事件」「獄門島」という日本推理小説史上、屈指の名作を立て続けに発表した他、角田喜久雄「高木家の惨劇」、坂口安吾「不連続殺人事件」、高木彬光「刺青殺人事件」という横溝作品に負けず劣らずの名作・傑作群が、本書に続いて登場している。

その本書の内容については、もはや語る必要はないだろう。
犯行現場の離れの座敷は内部から施錠され、さらに雪が降り積もっている中、犯人の足跡がない二重の密室仕立てという不可能殺人をテーマに、英米の論理的な本格推理の手法を用いながら、琴や屏風、灯篭などの日本的小道具を用いて「和風」の美を追求し、さらに徘徊する謎の三本指の男、生涯の仇敵といった味付けを加えた本書は、紛れもない名作と言えよう。
唯一の欠点は犯行現場を密室にした理由で、正直なところ、金田一の推理には開いた口が塞がらなかったが。

とは言え、イギリスではアガサ・クリスティーの名作「アクロイド殺し」が、アメリカではヴァン・ダインの処女作「ベンスン殺人事件」がそれぞれ1926年に発表され、以後黄金時代に突入した英米から遅れること20年目にして、ようやく本書を皮切りに日本は本格推理小説の黄金時代を迎えたわけで、そういう記念碑的な意味において、本書の意義・功績は計り知れない程に大きい。
婚礼初夜に起きた密室殺人 ★★★★★
名家の婚礼初夜、離れで寝ていた新郎新婦が殺害された。

離れの建物にはしっかりと戸締りがなされ、しかも、
周囲は雪で覆われており、いわば二重の密室状態だった。

にもかかわらず、犯人が立ち去った足跡は見当たらず、
凶器の日本刀のみが離れの外に残されていた……


大掛かりで複雑な機械トリックが特徴の本作。

普段ミステリを読まない人が、本作を読めば、犯人のあまりに旧弊な犯行動機も含め、
「なんでわざわざ、そんなことすんの?」と思うんじゃないでしょうか(w


しかし、ミステリ的にみれば、純日本家屋の中で、あくまで「和」の道具立て(琴、
日本刀、鎌など)によって密室を構成してみせた本作の歴史的意義は大きいです。

そして、そうした日本的なモノがそれぞれに帯びる象徴性が捨象され、単純な機能に
解体されることによってトリックとして再構成されるメカニズムこそ、ミステリの勘所です。


我々は、横溝作品といえばつい、おどろおどろしさや猟奇性ばかりをイメージしますが、
あくまでそれは演出の一面にすぎず、伝統的な和の意匠が、ことごとく抽象的なロジック
へと還元されていく、ギャップや異化効果にこそ、その真骨頂があるといえます。
密室殺人事件 ★★★★★
本書は、本陣殺人事件の他に二つのショートショートがついている。

『本陣殺人事件』は密室ものである。途中で筆者は金田一に密室の探偵小説について語らせている。曰く、犯人がある方法で−針金だの紐だのを使ってですね−あとから錠だの閂だのをおろしておいた、などというのは感心しない・・・
であるならば、本件はこういうトリックではないということが分かる。
ではあくまで密室なのであろう。しかし、犯行に使われたと見られる凶器は部屋の外にあるのである。となると・・・

『車井戸はなぜ軋る』は、酷似している異母兄弟が戦争から帰って来る、が、一人は戦死し一人だけで。さあ、その本人はどちらか、というのが話しの中心である。何か犬神家の一族にこんなのがあったような・・・

『黒猫亭事件』は「顔のない屍体」ものである。筆者曰く、探偵小説には「一人二役」型だの、「密室の殺人」型だの、「顔のない屍体」型だのがある。後の二つは途中でそれと気付くが、「一人二役」型は読者に感付かれたが最後、その勝負は作者の負けであると。また、「顔のない屍体」は、十中八九被害者と加害者がいれかわっていると考えて間違いはないと。
さあ、本件のトリックは如何に・・・
この作品の最後にこういう文章がある。
「私は正直にいうが、見破ることが出来なかった。読者諸君はいかに?」
至らない作家がこんなことを書けば噴飯ものだが、この作家に言われるとどうにも、にやりとして、ああ分からなかったよ、と言うしかないのである。

三篇の内では『本陣・・・』が有名なのだろうが、トリックとしては『黒猫亭・・・』が一番練れている気がした。