不朽の名作!
★★★★★
無理の多い話をいかにもっともらしく語るか、それが成功しているのが本作。
戦後の混乱、因縁めいた島、対立する二つの旧家等の舞台設定により、
かくも魅力的な物語を作り出している。
戦友から託された願いを懸命に果たそうとする(お約束どおりできないのだが)
金田一も、シリーズ中で最も魅力的に描かれていて、憎むべき犯人にさえ見せる
やさしさに彼らしさを感じる。
ストーリー、トリック、猟奇さ、巧みな人物描写、意外な犯人等々、何拍子も揃った
不朽の名作であり、特に殺人に必要な3つの条件が実は・・・・・というあの展開は、
実に見事だと感じた。
文芸作品として読んでも面白い!
★★★★★
着想といい舞台といい天才的です。
単に推理小説としてだけでなく、文芸作品としても価値がある気がします。
ここに描かれた人間関係図はリアリティーをもって迫ってきます。(もしかして、芥川賞もの?)
時代考証などもすぐれています。
世界レベルで最高の傑作タンテイ小説
★★★★★
「ミステリ」でなく、懐かしい古典的探偵小説として、横溝の、日本の、否、世界のタンテイ小説史上最高の傑作。ネタバレになるので書けないがトリックの一つは日本の土俗的雰囲気の中できわどいミスディレクションが駆使されていて、何回読んでもため息が出るほど。この素晴らしさを評価できる方こそ本当の「探偵小説」ファンといえるでしょう。
犯人を知って「そんなのあり?」
★★☆☆☆
初めて横溝正史を読みました。名作と言われていたので、期待して読みましたが、犯人を知ったときは「そんなのあり?」と思いました。トリックは物理的なものがいろいろ使われていて面白かったのですが、なぜ俳句の通りにしなければならなかったのか、なぜ3人の娘を殺さなければならなかったのかに説得力がありませんでした。この事件のそもそもの首謀者の正体を知ってがっかりし、少し怒りを覚えたのは僕だけでしょうか。犯人を考えず、トリックを考えながら読むことをお勧めします。
なんともいえぬ美しい殺しかた
★★★★★
横溝正史の魅力が凝結した一作である。横溝ほど万人に愛される推理作家も珍しいと思うが、
それにはやはり、トリックもふまえて革新的な開拓者の面を持ちながら、あくまで舞台背景に
強い拘りを持つ頑固職人的な二つの側面を合わせ持ち、尚且つそれが何の衒いもなく自然に
融和し、独自の世界観を築いているからだろう。
ここでのレビューでも、多くの名前が出ているが、まさに本作では英米の本格黄金時代に活躍
した作家達から多大なエッセンスを吸収しており、そのパズル要素を日本独自の因業が揺曳し
封建の極みともいうべき獄門島という舞台で、芭蕉の俳句など和の美で構築された見立て殺人
を用意した事により無類の一品になっており、まさに唯一無二の横溝の世界というものが最初
に確立した作品だろう。
そして、もう一つ重要な要素として人間の描写があり、彼の経歴や遅咲きの成功からもくみと
れる事だが、「人間」というものに対しての非常な関心と観察の才があり、真実それこそが
最も天才的な部分だと個人的には思っている。。この作品の批評で犯人の動機がおかしい云々
というのは必ず上がる声だが、果たしてそうか?これ以上「人間」らしい動機が存在するの
だろうか?横溝作品に関して謂えば、動機がおかしい等は、むしろ誉め言葉である。背後に
裏打ちが見えるからこそである、努力の結晶が見えるからこそである。。
それにしても、物語にどれだけ妖気がたちこめようとも邪知が跋扈しようとも、最終的には
胸がジーンと感動する感覚に陥るのは純粋に不思議だ。。それには、やはり金田一耕助に
抱いてしまう親愛の情に近いものがあるからなのかもしれない。
そういう意味では横溝の作品は、総合的には中庸を保ちえていて推理小説という枠組み内に
捉われず一つの話として高い完成度を誇っていると感じる。まあ、この作品はその最たるもの
か。。永遠に伝達されるべき名作だ。