ディー判事が友人の隣県知事ルオを訪れた際の殺人事件である。そのため、お馴染みの副官たちは一回も登場しない。ルオの協力もあるが、基本的にはディーが単独行動で謎を解き明かしていく。足で稼いで回っているのである。そのあたりの新味が心地よかった。ルオも魅力的なキャラクターだ。
事件、真犯人、トリックなどは、いつもと同じく、たいした面白みはない。古文書の調査に訪れた青年が殺され、続いて美しくない舞妓が殺される。狐の娘なども登場して物語を盛り上げようとするが、もうひとつ。
容疑者のキャラクターがどの作品でもパターン化されているのも残念。
巻末で著者が当時(7世紀)の中国に弁髪はなかったと注記しているが、この時代の中国(というか旧世界)には狂犬病も存在しなかったことには気付かなかったのだろうか。