初期の短編初文庫化第2弾
★★★★☆
収録作品および出典は以下の通り。
歔欷(すすりな)く仁王像(少女倶楽部 昭和13年6月号)
和蘭人形(少女倶楽部増刊号 昭和13年10月)
身代り金之助(少女倶楽部 昭和14年2月号)
鳥刺しおくめ(少女倶楽部 昭和12年5月号)
戦国会津唄(少女倶楽部 昭和12年9月号)
半化け又平(少女倶楽部 昭和11年11月号)
蒲生鶴千代(六年生 昭和15年10月号)
誉れの競べ矢(少女倶楽部 昭和10年12月号)
梅雨の出来事(読切小説集 昭和27年8月号)
美少女一番乗り(少女倶楽部増刊号 昭和13年4月号)
「春いくたび」に続く初期の少年少女小説の初文庫化短編集。周五郎が戦前に少年少女向けにに発表していた短編をまとめたもの。出典をみれば判るとおり、少女倶楽部に発表された作品がほとんどを占める。唯一戦後の作品である「梅雨の出来事」は、前項篇のうち後編のみの収録で、あとがきによれば全編はいまだ未発見とのこと。従って後編だけではやや物足りない。これ以外は「春いくたび」同様当時の時代背景を反映した少年少女向きの作りとなっている。「和蘭人形」「鳥刺しおくめ」「誉れの競べ矢」「美少女一番乗り」は、15〜17歳の勇気ある美少女が活躍する作品で楽しめる作品となっている。「戦国会津唄」は、周五郎らしらの萌芽が感じられる作品で興味深い。周五郎ファンで未読であれば、周五郎の作家としての成長を知る上でも貴重な作品集といえる。