巨星墜つ・・・・禅門相国清盛、薨去。
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以仁王の令旨宣下から、伊豆頼朝との富士川の敗軍に続いて、
信州では木曾義仲の挙兵・・・・と全国の源氏方が一陽来復の思いを
この時とばかりに、決起して行きます。
保元・平治の頃からほぼ30年余、その斬新な発想と磊落な人物像は
大輪田ノ泊、音戸ノ瀬戸などの対外的公共事業も起こし、爾今、明治維新まで続く
武家政権の基を築いた平清盛の功績は実に大きいものでした。
しかし、打ち続く飢饉や天変地異、一族の権門への集中と栄華独占のありようは
世の批判を強く招く事となり、南都北嶺や後白河法皇との年来の確執が
清盛時代の晩節を苦しくしていました。勃興する源氏方、衰退してゆく一門を
憂慮しつつ、治承5年2月、ついに風雲児平清盛は幽明境を異にします。
年を享ける事64でした。
清盛一代で築き上げた平家政権。清盛亡き後はさしもの六波羅の大廈も
混乱と無策を極めます。所詮2代目、3代目・・・なんですね。
全てが後手後手に廻ります。世襲の公達と、片や苦杯を舐め
臥薪嘗胆の源氏方では志の持ちようと行動が当然ながら最初から違いました。
この頃、源氏方の頼朝は鎌倉に新府を開き組織と統制について
将来の政権構想を練り、周辺への派兵や遠方との源氏方との連携を濃やかに、
源氏武士団や新政権の脆さも難しさも冷静に見て布石して行きます。
その視線の先には破竹の進撃を続ける木曾義仲の姿もありました。
富士川の戦い
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いよいよ富士川の戦いを迎えます。
清盛の息子と孫たちは、
作戦が破綻したことを知ってもなお止まり、
飢饉で苦しむ民から兵糧を徴収し、
貴族化した姿をさらけだしてしまう。
永遠に続くかの栄華がもろくも崩れはじめた。
平家の公達には、その理由がわからない。
もはやこれまでの平安貴族のありかたが、
時代にあわなくなっていることを。
平家の特徴
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栄枯盛衰は世のならいといえども、平家の落日がはじまりつつ
ある、この巻では、なんとももの悲しさを覚える。
平家一門の特徴として、
「家族・肉親を大切にする」
という清盛の基本的な考え方が浸透しているように思える。
(一部、そうでない部分もあるが)
比べて、源氏・頼朝は何とも冷たい。敢えてそのように描いて
いるのかもしれないが、肉親といえど、なかなか信頼しない。
頼朝と義経の初対面にも如実に出ていると思う。
この物語のなかで、平家は敗者であるが、なんとも同情的
になってしまうのは、このあたりからくるのかもしれない。