歴史ファン、個人投資家、および土いじりだけでは飽き足りない園芸好きの人におすすめしたいのがこの本。17世紀中ごろオランダで起きたチューリップ騒動は、実に興味深い。チューリップはもともとヨーロッパやアジアの財力ある教養人たちの間で贈り物の品とされていたが、突如投資の対象となり、信じられないような高値で取引きされるようになる。今なら新規設立のインターネット企業や、ビーニーベイビー(全米で大ヒット中の手のひらサイズのぬいぐるみ)のコレクション、といったところだろう。職人は本職そっちのけでチューリップ栽培に専念し、一般人を相手に競りにかけ、領主の邸宅1つ(あるいは羊12頭、バター2トン、チーズ1000ポンド、船1艘…)が買えるほどの値で売った、という驚くべき話が展開される。詩人やモラリストや商人など、誰もが巻き込まれた時期もあったらしい。
規制がないうえに品質管理が甘かったこともあってチューリップ価格は急騰し、1637年2月に頂点に達する。チューリップバブルは世界初の市場暴落となり、人々は破産し、負債が残った。1929年の株価の暴落に似た惨事である。その65年後、規模の小さなチューリップバブルがイスタンブールで起こる。だが、オランダの体験したような経済パニックには至らなかった。代わりに、花の形状の基準が設けられ、新種の開発が進んだ。
これは無理にでも読まねば、というような本ではない。だが、チューリップや歴史、先物取引市場に興味がある人なら一読に値すること間違いなしである。
大変ユニークな経済史
★★★★☆
17世紀のオランダで起った摩訶不思議な事件を追ったドキュメンタリー。
貿易で儲け金満国家となっていたオランダに、オスマントルコ帝国から、珍しいチューリップの球根が輸入された事から事件は始まります。チューリップは人々の関心を呼び、次第に値段が上がっていきます。やがて球根そのものが先物取引による投機の対象となり、値段はさらに上がり、遂には球根一つが家一件を買えるほどの価格に高騰しますが、やがて誰も買い手がつかなくなり、市場は大暴落。このチューリップバブルは破綻します。
歴史上初のバブルとして名高いこの事件を、本書は丹念に追っていきます。
読んで初めて知った興味深い事実は、チューリップバブル以降にもヒヤシンスバブルなど、花にまつわるバブルは歴史上何度も起きていると言う事、そしてそれは1980年代まで続いていたということ。
異国情緒あふれる読み物としても、また異色の経済史の本としても、楽しめる事間違い無しの一冊です。
何度読んだか。
★★★★★
オランダのチューリップ(正しくは球根)に、実際におこった愚かな熱狂を描いています。不動産やネットバブル以上に、「小さくてあやふやなもの」を庶民が大枚をはたいていた事実に驚きます。文章がうまいので読み進めやすいです。何度読んでも驚きとスリルに満ちていて、私だったら、と考えずにはおれません。後半のアラブ社会でのチューリップバブルは少しペースダウン。といっても面白いですが。絶版になっているのが残念ですね。
チューリップ・バブル―人間を狂わせた花の物語
★★★★☆
17世紀オランダで起きた、人類史上初の投機バブル現象を追った力作。空前の値をつけた人気品種のすべてが、実はウィルスに侵されたはかなくも哀しい一抹の美に過ぎなかったことがなんとも象徴的。
読みやすいですね
★★★★★
経済学の専門書はちょっと……という方には、もってこいの書物です。ただ、チューリップ・バブルより以前「世界最初のバブル崩壊」南海泡沫会社事件を知らない方もおられるようで……。
史上初のバブル崩壊!
★★★★★
いわゆる「マーケット」においては時に様々なバブルが発生する。近いところではITバブルや80年代の日本株や狂乱地価などもそうだ。大恐慌の引き金となったニューヨーク株暴落もそうであるし、市場の中の出来事とはいえ、その崩壊は世界中に大きな影響を与えてきた。
このバブルという言葉は、18世紀英国で起きた南海泡末〈サウス・シー・バブル〉事件に端を発する。しかしバブルの発生とその崩壊として最も有名なものは、このオランダで発生したチューリップ・バブルではないだろうか?
セーフティー・ネットのない、前近代的な市場制度のおかげで、チューリップ投機は瞬く間に急騰を遂げ、伸びきったゴムのように、臨界点を越えたところで暴落した。知られざるその細かい経緯を概観できる良書である。