デリダ レヴィナス理解に重要な一冊
★★★★★
レヴィナスの死に際してデリダが敬愛の念をもってレヴィナスの思想を批判し、「応答責任」を果たす。自己によっては絡めとることの不可能な他者への絶対的な志向、服従という今までの西洋哲学の転倒であるレヴィナスの他者の思想を受け入れつつも、その自己矛盾を示し、その思想のもとにどのような政治や法が可能かを追求する。その際にはカントの平和概念を引き合いに出し、それと比較しながら論をすすめていく。訳文のおかげもあってのことと思うが、語る対象が「レヴィナスの言葉」と固定されているためか、非常に読みやすい印象を受けた。一方でレヴィナスの思想に「応答」しなければという責任感の上につづられるデリダの言葉の数々は感動的であり、レヴィナス及びデリダという思想家の姿が肌身に迫ってくる感じで迫力がある。