将軍秀忠誕生。
★★★★★
将軍宣下を受け、2年余りで秀忠に譲位する家康公。2代将軍秀忠の誕生です。
これは、安易な世襲ではありません。その証拠に本多正純、成瀬正成、安藤重次
といった次代を担う若手官僚は自ら指導にあたり、本多正信、大久保忠隣などの
徳川家の重鎮は敢えて、江戸の秀忠に付けているあたり、
家康公の組織造り、人造りの巧みさが窺えるものです。
秀忠は内政にあたり、公自らは外交にあたるというシフトでした。
今や、酒井、榊原、本多、鳥居などの武闘派ではなく、
利財の経営や運用に長けた官僚派といった人材の登用が目立って来ました。
時代は移りました。今昔の感ありです。
この巻で紙面を大きく割かれている《大久保長安》。
これもその代表的な人物でしょう。
猿楽師が前身という数奇な来歴ながら、鉱山開発を手がけた人物。
荻原重秀、田沼意次の先駆けとなる幕府の経済官僚ですね。
出自も不明確な人物なので、山岡先生も自由に長安に活躍の場を
与えている感じです。
家康公は三浦按針や八重洲たちに世界の情勢を質し、戦後の牢人たちの処理に
手を付け始めます。イギリス=紅毛、スペイン=南蛮と、戦後の牢人たちと
周辺の雄藩・・・・この三つ巴が次の悲劇を生む要因のひとつになります。
世界でも有数の武器保有国・日本を武装解除させ、
戦国のパラダイムを泰平にシフトさせつつある家康公。
どうしても立ちはだかるのは‘大坂城’です。