生きることの意味を知る
★★★★★
上下巻読み終えてのレビューです。
青春というものは残酷で薄情で、なんと危ういものかと、背筋を寒くしながら読みました。
不条理や無力にあらがえず、行き先も見えずにただただ苦しむ「こども」たちと
闘うことすら放棄し、ただ逃げ惑う「おとな」たち。
「何のために生きているのだろう」呟きながらも答えを見出せません。
全編を通し、生きていくこと、一人でいることの意義をリアルな描写をもとに問い続ける作品です。
それはのど元にナイフを突き付けられたような恐怖にみちた旅でした。
下巻においてはホテルでエリと対峙するシーンの「救いのなさ」は絶筆に尽くしがたいものです。
また神のごとき視点をもった語り手の存在もこの小説の大きな特徴のひとつです。
まさしく海鳥のように高い場所から、語り手は主人公を見守り続けます。
無垢な視線で故郷を眺めていたころから、岸辺に打ち上げられるその日まで。
上巻は中学生でも読んで欲しい内容ですが、後半の描写はあまりに過激で、大学生以上にしか勧められません。
殺人や性交シーンの過激さに目を奪われ、高校生ではちょっと本質が読み取れないのではないかと思います。
とはいえ本当に「面白かった」小説です。
★5つです。
ひとり、でも
★★★★☆
本当はとっても優しい主人公が「いかにも」な不幸の連続に見舞われ、
なんてこの世は理不尽なんだろう。というようなごく普通の物語かと読み進めていましたが、
この下巻のP324のセリフを読んで、本当に胸が締め付けられました。
結末はどうあれ、彼は救われたんだと思います。
弱いにんげん
★★★☆☆
この著者はなんて残酷だろう…
そう思わずにいられないほどだった。
少年達の深い傷と絶望の連続。
あまりにも心が痛く苦しい。
僅かでも救いがあれば、心も軽くなったし、
ここまで追い詰めなくても、深淵に長く刻まれるものもあっただろう。
それでも最後まで読みきったのは、深い深い悲しみの奥の奥に、
少年の優しさと純真な心ゆえの「美しさ」をみたから。
自分が欲したものかもしれない。
重く暗いテーマでありながら、優しく諭すような表現で、少年少女の叫びが綴られたからこそ、
孤独に埋もれ、羽が折れ、光の見えない闇を探る「弱いにんげん」の聖書に成り得るのかもしれない。
作者に聞いてみたい
★☆☆☆☆
この本を通して一番書きたかったことは何か
作者に聞いてみたい気がする
ただ不幸な少年の一生を描きたかっただけなら
他にいくらでもストーリーはあると思う。
読んでいるのがつらかったし、
読了後も「今の自分にこの本は読む必要があったのかなあ」
と思ってしまった
どのように感じるかは人それぞれ。
疾走という題名も
色々考えてしまう。
星をつけなくては投稿出来ないから
好みか否かで1にしてしまったけど、
本心は星をつけようがない。
良い、悪い、好き、嫌い、
おすすめ等とくくれない。
少なくとも軽く読み流せない本だと思う。
確かに深いけど・・・不幸展開すぎる
★★☆☆☆
上巻からある意味救いを求める感じで読み進めていきました。
確かに、今までの重松清さんの作品とは違い、本当に「ひとり」の物語。
誰かとのつながりを心から求め、そしてひとりで終わっていく主人公。
ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかわからないけれど、何か重いものを感じる読後感。
「おまえ」の二人称で進んでいく語りも読みやすく、気分は落ち込んでいきますがわりとすらすらと読めました。
しかし、少し不幸すぎませんか。
高慢だった兄が放火に走り、家族は崩壊、さらに家出先でヤクザに激しい性的暴力を受ける、そしてさらに好意を抱いていた(可愛い)女の子が援助交際をしていた・・・
いくら偶然の重なりで仕方ないとしても、これは不幸が多すぎるではないか。
そして主人公の終わりも、「ケータイが鳴って驚き体勢を崩したせいで撃たれた」というのは、ムリにまとめすぎる。
深い話だった、というよりも、不幸の重なりが非現実すぎて途中で萎えてきます。