フッサールの後期思想を中心に(前期思想に関してはおおざっぱなところもあるが)かなり精密に概念を整理しながら解説している。それがなぜ感動的かというと、著者の整理によってフッサールが何度もみずからの思考の限界につきあたり、しかもそれは自分の思考を徹底的につきつめていったはてにその内部から思索が打ち砕かれるという形でつきあたるのだが、また新たな分析方法を考え出し、それをつきつめ、また限界に突き当たり……という仕方で黙々と前進していくというふうにフッサールが描かれているからである。
フッサールの影響は大きい。ハイデガーはもちろんのことデリダだってレヴィナスだってドゥルーズだってフッサールが切り開いた問題意識なくしてはありえないはずだ。そんなに大きいフッサール。でも最近ちょっと過小評価されているような(日本でだけ?)フッサール。そんなフッサールの後期哲学への最良の入門書でありつづけることをこの本はまだとうぶんやめることはないだろう。