「国境の南、・・・」は静かな書き出しだ。この2つの作品が並んでいるところに第2巻の価値があるように思える。どちらも中編で、どちらからも音楽が聞こえてくる。それは決して耳障りではなく、かといって聞き流せるものでもない。
巻末にある解題は、作者自身の声であり、これにより前後の作品との位置関係を知ることが出来る。「海辺のカフカ」は作者に語ってもらいたいことがたくさんある作品だけに、早く10年がすぎてほしいとも思う。
「スプートニクの恋人」の風景は「加納クレタ」と重なります。
若き時代に心から愛していた女性島本さんと再び出会った主人公のはじめくん。
しかし、その出会いは妻も幼いこどももいる
現在の生活に少しずつしかし確実にひびを入れていく。
かつて失ったかけがえのないものを取り戻す機会に直面したとき、
それを手にするためには現在手にしているもの
すべてを失わなくてはならないとしても
私たちは過去を求めようとするのだろうか。
そして、主人公はじめくんはどちらのみちを選ぶのか。
そんなことを考えさせてくれた小説だ。
まだ読んでない人にも是非読んでほしい作品である。