現代日本文学の至宝
★★★★★
期待感のない小説だ。ノーベル賞をとっても驚きはしないからだ。また読みおえた人を不幸にする小説だ。これよりよいものにめぐりあうことは今後そうないと思えるからだ。それ以外けなしようがないほどの大傑作。これ一冊で村上春樹の偉大さが十分わかる。
奇妙な鳥の声に気づくと間もなく愛猫が姿を消す。主人公岡田トオルの平凡な日常は徐々に変貌し、ついに妻クミコまで謎の失踪をとげる。何かが狂ってしまったなら、もとに戻すしかない。ねじまき鳥の声が止まると、岡田トオルの静かな戦いが始まった。行く手を阻むは綿谷ノボルほかに象徴される悪。時空をこえ世界を支配する強大な敵だ。普通人、岡田トオルは、はたして勝てるか。だが魂の彷徨を続けるなか、彼は多くの人にめぐりあい、学び、力をつけていく。登場人物、エピソードはそれぞれが深い洞察に満ちたメタファーだ。複雑なこの世のすべてが記されているといっていい。さまざまに読みとけるだろうし、それ自体また楽しい。この本の魅力を語るだけで分厚い本が書けるだろうし、事実、出版されている。
一見シュールで難解だが、愛するものを奪還すべく悪と戦うシンプルさが核。古典的で普遍的なテーマを追求した清々しい物語だ。多くの読者をひきつけてやまないゆえんだろう。意味不明だがとにかくこの話が好きという人が多いのは、頭ではなく魂で読む優れた読者をそれだけとりこにしているあかしだ。
物語同様、簡潔な文章は、澄明で流麗。だから読みやすい。これからもより多くの人に愛されることを願う。
非常に深く謎が絡み合った作品。
★★★★★
私はいままでこのような趣向のものは好んで読まなかったのですが、友達に奨められ読み始めました。一般的にみてどうかわかりませんがかなりの大作、そして長編小説だと思います。ライトノベルやエッセイとは当然のことながら読み深めていく度合いが違い、読み深めていく要素がたくさんある作品です。
どのようにレビューを書けばいいのか正直わかりません。それは内容が私には難しいからですが、ある種の引用やこの意味は前の文脈と似ているなど、人の心情が事細かに実際それが本当に体験しないとわからないのではないか、と私は思いましたが本当に描写がうまいです。
読書をしていると心の中からふつふつといろいろな感情が私は沸いてくるのですが、今まで読んだ中でこれほど深く疑問に満ちた感情が沸いてきたのは初めてです。単純人間な私はこの現実世界という価値観が大きく揺らぎました。
読み終わったあとに(まだ途中ですが)自分が自分じゃないような変な錯覚に陥りそうでした。
読書家の人はぜひ読んでもらいたい作品です。
悪を描く
★★★★★
村上春樹が新しい領域に挑戦した意欲作。逆にそれまでの作品(ノルウェイの森など)に慣れ親しんだ人にはとっつきにくいかもしれない。だが、この作品にはそれまでの村上春樹も居るし、「悪を描く」というテーマと戦っている新しい村上春樹も居るような気がする。
恐るべき長編
★★★★☆
作者最大の作品です。構成もさながら、内容も複雑で多岐にわたってます。単行本の装丁も素敵でしたが、全集の装丁もなかなかの物です。
後書きは作者の考え方を知る上で重要な資料になってます。