読んでみると、なぜエリートと呼ばれるような人々が、超能力の獲得などをうたい文句にしている怪しげな宗教にひかれていったのかがよく分かる。彼らの大部分は純粋である。なにか理想的なものを追い求める傾向がある。彼らは、この世の灰色の部分を認めることができない。彼らにとって、この世界は白か黒でなければならないのだ。しかし、現実の世界には灰色の部分もある。それを受け入れ、その中でバランスを取りながら生きていけるということが大人になるということだと思うのだが、オウムの信者にはそれができない。彼らは、自分たちの理想を求め、純粋な理想郷(オウムの目指す世界)を作る仕事に身を投じていく。
また、そこ(オウム)には、彼らの疑問に対する完全な答えが用意されている。その論理には、矛盾もあいまいさもない。だからこそ、頭の良い、しかし大人になりきれないエリートたちが入信していったのだろう。
そして、彼らにとってオウムという世界は完全に真っ白な理想郷(あるいは、それに近いもの)である。それゆえ、外の世界は彼らから見れば黒色(悪)になってしまう。そこから、サリン事件のような犯罪が生じてしまったと言える。彼らから見れば、自分たちを邪魔する現実世界は完全な悪にほかならなかったのだ。
この本を読めば、オウム事件の真相の一端を垣間見ることができる。