歴史的名場面と歴史的時代転換の瞬間までを堂々完結!
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1983年11月徳間書店から刊行された第7、8巻を合本とし改定したもの。物語は劉備が亡くなり南を平定した孔明が瀘水を鎮めるのに饅頭を49個作り(饅頭とは孔明の発明品のひとつである!?)本書の2分の1までが孔明と司馬懿との対決で、五丈原で孔明が没してしまうものの、それに留まらず三国の最期がどうなったかまでが記されている。冒頭から思わず涙が出てくる名訳が続き、孔明の「花」が散ってしまった時には、思わず脱力してしまい、突然読むスペースが落ちてしまったほど前半の盛り上がり方は凄まじい。大概「三国志」と銘打っている本はこの孔明が死んだところで終わりにするので、どうしても後半半分を読む気が萎えてしまうのだが、孔明の後をついだ姜維が頑張っているので是非、完読していただきたい。そこには歴史は繰り返すというのか、蜀帝の劉禅が酒色に溺れ宦官にいいように扱われるまるで霊帝の如しである。一方の魏帝になった曹叡もまた先人と同じくして絢爛豪華な朝廷を欲しい儘にし、司馬懿がクーデターを起す。懿が亡くなって司馬昭が政権を欲しいままの残虐ぶりは董卓並で、とうとう晋帝となり既に魏に下ってしまった蜀は自然、晋となり、孫権亡き後の孫亮は聡明であったにもかかわらず諸葛亮孔明の兄、瑾の息子が乱暴者であったが結局は晋に併呑され、「魏、呉、蜀のどれが天下を統一したのか?」という疑問に三国ともに天下統一はできなかった、ということになる。本書は2007年に訳者・立間祥介自身による解説が書かれており、翻訳に当たって小川環樹・金田純一郎訳「三国志」、井波律子訳「三国志演義」(ちくま書房)を参考にしているとのこと。解説も非常に詳しく書かれているので是非一読していただきたい。