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レ・コスミコミケ (ハヤカワepi文庫)

価格: ¥840
カテゴリ: 新書
ブランド: 早川書房
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まるで、科学とホラ話が融合して、ぐるぐると渦を巻いているような ★★★★★
 宇宙のはじまりの頃にあったこと、人間などまだいない太古の時代に起きたことを、<わし>こと<Qfwfq老人>が語っていく連作短編集。混沌の中に生まれた原初の星雲のような、「科学」と「ホラ話」が融合してぐるぐる渦を巻いているような、何ともいえない面白味がありましたね。あっけにとられてるうちにどんどん話が進んでいって、ワハハと大笑いしてしまうみたいな無類のおかしみ。ほんと、不思議な味のする短編集なのでした。

 「月の距離」「昼の誕生」「宇宙にしるしを」「ただ一点に」「無色の時代」「終わりのないゲーム」「水に生きる叔父」「いくら賭ける?」「恐龍族」「空間の形」「光と年月」「渦を巻く」のひぃふぅみぃよぉ、全部で12の短篇からなっています。
 なかでも、次の三つの短篇が面白かった!

★地球からすぐ手の届く距離に月があった頃、わしらは舟に脚立(きゃたつ)を立ててな、のぼるだけで月に行けたんじゃよ・・・・・・「月の距離」
★わしがまだ子供だった頃、Pfwfpと遊んだんじゃがな、そのゲームというのがビー玉みたいにアトムを転がしたりはじいたりするものでな・・・・・・「終わりのないゲーム」
★ある夜、わしが天体望遠鏡を覗いておった時のこと、一億光年の彼方にある星雲からプラカードが突き出ておってな、それには「見タゾ!」と書いてあってな・・・・・・「光と年月」

 本書の帯に、作家の川上弘美の推薦文が載っていまして、<そりゃあもう、類のない本なんです>と書いてあるのですけどね、「全くもってそのとおり!」と拍手したくなったのでした。
素朴な言葉で壮大な宇宙を描いてしまったレ・コスミコミケ ★★★★☆
レ・コスミコミケは異色だと思う。構成としてはQfwfqが語る12章の物語からなっている。各章はほとんど独立した短編として読むことができる。一応時系列になっている(時間的前後関係が不明なものもある)が、当の作品の中で章の時間的前後関係はとりたてて重要ではないと思う。
「月の距離」(第1章)に出てくる「つんぼの従弟」は、気ままに自分のロマンを追いかける。彼は『不在の騎士』に登場するグルドゥルーに似ている。VhdVhd夫人はこの「つんぼの従弟」に憧れ、QfwfqはVhdVhd夫人に恋焦がれる。
このような三角関係(一人の女性を巡って二人の男が争う)、
トリックスター的自己(両生類としてのQfwfq、あるいは恐竜としてのQfwfq)、
二項対立(「宇宙にしるしを」のQfwfq vs Kgwgkなど)
が基本的な軸となって物語りは展開される。
各章の独立性が強い。面白い章もあれば、退屈なのもあった。一人の人間の現実も、百億光年離れた銀河も、宇宙ができるより前も、恐竜の心情も、水素の誕生も、自由に行き来してQfwfqは語る。(彼が何者かは謎である。)
宇宙の特殊な現象、人間の日常生活とかけ離れた世界の出来事が、あたかも私達の日常生活の出来事を語る調子で展開していく。魚の叔父と新生類のフィアンセの間で板ばさみとなった両生類Qfwfq。宇宙の原型段階で、あらゆるものが未分化の状態にあっても、真の愛情の発露であるPh(i)Nko夫人の発言はただ、「ねえ、みなさん。おいしいスパゲッティをみなさんにご馳走してあげたいわ!」という素朴なものだった。
カルビーノは、いがみ合い、失恋、深い愛情など、素朴な日常の出来事を、壮大な宇宙の現象に絡み合わせて、面白い描写をする。その力量ゆえに、Qfwfqが壮大な宇宙見渡し図を、人の素朴な言葉でさらりと言いのけてしまった異色の作品が出来上がったのだろう。
Qfwfq爺さんの楽しい宇宙史の教科書 ★★★★★
これほどハッタリの効いた本は珍しい。
あまりに荒唐無稽すぎて、笑えてくるのだ。
だって、あるときふと「スパゲッティをご馳走したい」って口にしたおばさんのお陰でビッグバンが起きたらしいんですよ。この宇宙の始まる前からずっと生きているQfwfq爺さんが言うには。
もうほんと笑うしかない。

もちろん、きれいでロマンチックなハッタリというのもある。切ない後味のハッタリもある。まったく謎めいたハッタリもある。カルヴィーノ氏の尋常じゃなく豊かなイマジネーションに色塗りされた宇宙史という名のハッタリに、いちいち付き合って一緒に遊ぶのは純粋に楽しい。

しかし。今回は「楽しい」からもう一歩踏み出してみます。どうも私には、Qfwfq爺さんの語るてんでばらばらのハッタリが、共通する「あること」をそこはかとなく暗示しているような気がします。「それは具体的になんなのだ?」と詰め寄られても私はモゴモゴと口ごもるしかないのだけれど、とにかく「何か」あるような気がするのです。12のハッタリ話の真ん中に(きっと)ハッタリではない重要な何かがあるはず・・・。

私はそんなことを考えて、持てるわずかばかりの想像力をフルに稼動させながら、何度もこの本を読んでいるのですが「何か」が何だか未だにわかりません。
「我こそは」と思う方、ちょっとやそっとの想像力じゃびくともしないこのハイパーなSFに挑戦して、ぜひ謎を解いてみてください。