Love is SHOKO…
★★★★★
”愛”人間にとって避けては通れないこの厄介なシロモノ…
ドロドロ、モヤモヤ、イライラ…キリがない程の苦悩を味わいながらも、一瞬の麻薬のような快感を求めずにはいられない。
鈴木祥子は曲を通して”愛”と正面から向きあうことを選んだ。
確かにヘビーな歌詞は、聞いていると気が重くなることもある。
綺麗事抜きでダイレクトに迫ってくる迫力に、押しつぶれさそうになる…
それでも聞かずにはいられない。
”愛”は大きな力を持っている。自分ではコントロール出来ない大きなパワーを秘めている。どうすれば分からない時に聞いてみればいいかもしれない。
少しは”愛”に対する接し方が、分かるかもしれないら…
執拗なまでに愛を求める主人公
★★★★★
2006年作品。彼女のマイルストーン的作品なだけでなく、2000年代日本の音楽界屈指の名作。
鈴木祥子は、現在(2010.3)までに13枚のオリジナル作品を発表している才人。
特定の嗜好に偏らない膨大な音楽知識のある人であり、作品毎に作風が異なるのもこの人の特徴。
多くの同業者から敬愛される「ミュージシャンズ・ミュージシャン」としての地位を確立している。
本作は、セルフタイトルを付けた作品の内容に相応しく、彼女の愛・人生観・ユーモア等のパーソナル
な視点が顕著に詞に反映された内容となっており、重目の余韻を聴き手に残す。
音楽の内容としては、彼女のピアノ弾き語りを軸に、曲によりバイオリン・チェロ・ドラムス・ギター・ホー
ン等を自在に加えるが、どの曲も音を詰め込みすぎず風通しの良さがある。
彼女の作品の場合、音楽も無論魅力的なのだが、彼女の線の細い声に乗せて歌われる言葉があまり
にも耳を惹くものなのでついそちらに注意がいってしまう。
冒頭の「愛の名前」、淡々とした曲調の中で、誤解によって愛を知ったという言葉が紡がれる。
以前本作発表時に彼女がネット上で発表したライナーノーツには、この歌にまつわるエピソードが書か
れていたが、非常に重いものだった。その中で彼女は「愛とは、その、救い難いどう仕様も無さのこと」
と綴っている。だからそれが誤解であっても「反省なんて別にしない」のだ、それも一つの愛の形だと彼
女は主張する。
個人的に最も好きな曲が「忘却」。痴呆症状態で長く入院している彼女の祖母を歌ったもの。
夫が亡くなってから、過去の幸せな日々を一つずつ忘れていくように思える祖母に彼女は「すべてを忘
れていくことは幸せですか?」と問う。ライナーノーツには、「誰かを恋する、という自分の存在証明を、
祖父とともに永遠に失ってしまったかのようでした」という言葉が綴られている。
マリリン・モンローの伝記小説からタイトルを付けたと言う「BLONDE」。この曲では、恋人という存在よ
りもっと大きく普遍的な存在である「父なるもの、に愛されること」への憧れを歌う。その前では人は無防
備状態になると言う。「あなたはなんでも好きなことをわたしにしていいのよ」という言葉には、全てを愛
するものに委ねたいという人間の潜在的な願望が見事に表れている。
収録されたどの曲からも、愛に渇き、なお強く愛を求める主人公の、痛ましいが美しい姿が浮かぶ。
これ程までに深くに愛について考え、その最も重い部分を赤裸々に言葉にできる人はそういないのでは
ないか。
聴き手には心が痛い作品であることには違いないが、その先には主人公の美しさと音の心地よさが見
えてくる。自分にとって、この先の人生何十年も愛の根底の部分について繰り返し教えてくれるだろう
素晴らしい作品だ。
うん。
★★★★☆
この人の歌はを聴いたのは初めてですが、
”表版 宮沢正一” のような印象を受けました。
どっちがいい悪いじゃなくコインの裏表のような‥
自分の感想は「うん」です。深く納得させられました。
日本の音楽界の至宝の一人だと確かに思います。
言葉にはしにくいが
★★★★★
この人のアルバムはセルフプロデュースの作品の方が好きです。この破格の音楽性の広さ、完成度の高さはもちろんなのですが、何よりも鈴木祥子自身を頑なに発信し続けていて、畏怖の念すら感じます。それにしても、ROVOがバックを演奏している曲では淫靡な雰囲気の中に崇高さすら感じます。星の評価なんて必要ないかな?星五つに決まってますから。この人ほど切実に自分自身を表現している人は他にいないと思う。そこには鈴木祥子の持つ様々な矛盾やエゴが隠されることなく表現されている。真のアーティストとはこうゆう人のコトのことをいうのだろう。
はじめての鈴木祥子
★★★★★
わたしは鈴木祥子さんというアーティストを知りませんでした。たまたま、おすすめ商品に入っており、ジャケットも良かったので買う事にしました。
そして一曲目「愛の名前」‥衝撃を受けました。歌詞も声も、生身の女性の恐ろしさのようなものが、直接突き刺さりました。
”反省なんて別にしない、だってしてみてもしょうがない”確実な愛、その愛だからこその強烈な傷み、苦しみ、どうしようもなさ。わたしは一生このアルバムだけは聴き続けていくと思います。
オーディオ的な側面で聴いても、こんなにコンプレッサー処理をしていないアルバムは珍しいと思います。とにかく”素”。素晴らしいアルバムです。