アメリカを代表する絵本作家の1人、ターシャ・テューダーの初期の作品。自然や農村での日常生活をモチーフにした彼女の絵本は、愛情や優しさにあふれながらも、その描写は非常に細かく、観察されたリアルさを兼ね備えているのが特徴である。
復刻版として出版された本著だが、黄色がかった紙を用いる、ページの隅を丸くカットする、などといった、ターシャの絵が持つ雰囲気を壊さぬための気配りがうれしい。そして、読み手に引っ掛かりを持たせる、独特のリズムを持った邦訳も、読む者に懐かしさを感じさせ、言葉の余韻を楽しませる。(田村恵美)