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日米開戦の謎

価格: ¥2,100
カテゴリ: 単行本
ブランド: 草思社
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日米開戦の謎
合理的な思考回路を見出しがたい無謀な戦争 ★★★★☆
日本が対米開戦に至ったことは、後から振り返ってみれば合理的な思考回路を見出しがたい。それほど無謀な戦争だった。しかも当時の指導者の誰一人として開戦に積極的だったという自覚がない。それは東条英機の獄中手記などでも明らかだ。合理的でないから「開戦の原因」は謎になる。果てはローズベルト政権の陰謀説まである。

本書では、大政翼賛の新時代、三国同盟、と時流に乗った軽薄さと政権を投げ出した優柔不断の政治家として断罪されてきた近衛の評価を見直し、その対比として天皇側近として「中国撤兵」の優諚を阻んだ木戸幸一の開戦責任を断罪している。

これまでの定説は、陸軍の専横と寡黙な海軍、軍部の強硬論になすすべもなく流されていった重臣たちを描くのみで、その要因を深く追求していくものがなかった。歴史には「時代の空気」のようなものがあり、集団の物語だとは思うが、これまでの戦争責任論が躊躇してきた生々しい個人責任論の蓋を開いたという点で新たな一石を投じた本とはいえる。
推理は真実に届くか ★★★★★
歴史の謎の部分を推測する・・・というと、井沢元彦の様にろくに資料も読まないで、
仮説を主張する事を想像するかもしれない。しかし鳥居氏はあらゆる資料を読んだ上で、
足りない部分を推理するのである。そして資料をどんなに読んでも全ての事実が
分からない以上、資料から人間の心理を推測する以外、事実に近づく方法はない。

鳥居氏には「昭和二十年」という大作があるが、この「日米開戦の謎」は
「昭和十六年」の日本の重臣達の対米戦へと向かう心理を詳述しており、
完成度は高い。日米開戦の原因に興味がある人は必読。

この本で注目すべきは、永野修身の心理を推測しているところだ。
同種の本は数多く出ているが、なぜか山本五十六ばかり注目され、
軍令部総長の永野修身がほとんど注目されない。

山本五十六は昭和十六年(1941年)の開戦決定にはほとんど関係していない。
開戦の重要な引き金を引いたのは明らかに永野だ。「ぐったり大将」と
呼ばれていたからといって、何も考えていなかったわけがない。
海軍統帥責任者の事実上のトップとして葛藤があった事だろう。

残念なのは、陸軍参謀長の杉山元についてはあまりページを割かれなかった事。
中国からの撤退に絶対反対だった事は分かったが、東條英機の考え方とどう違うのか、
それとも全く同じなのか(そんな事は有り得ないが)言及して欲しかった。

鳥居氏の文章は読みやすく、それでいて当時の人物の深い部分にスポットを当てていて、
歴史の面白さが実感できる。☆10個あげたいところ。とにかく満点。
日米開戦の謎は深い ★★★★☆
最近再び目立つ、アジアでの、特に中国での反日運動。戦争を知らない世代の私達は、なぜあの戦争を始めてしまったのだろうか?という原初的な疑問を抱かざるを得ない。資料を駆使し、また、大胆に想像力を働かせ、ある一面からこの謎に切り込む好著。
現代史の達人 ★★★★★
日本がなぜ米国と戦争することになったのかを、陸軍と海軍の官僚的対立から大胆に推理。普通の歴史家は日記などの一次史料の引用で満足してしまうが、鳥居氏は書かれたことの矛盾や何が書かれなかったかを史料を読み込むことによって推理していく、こんな独創的な歴史家を私はほかに知らない。