この本の中に、私淑する人をもつべき、とあります。安岡師は既に鬼籍に入られていますけど、これからまだまだ師の本を読んで私淑したい、私淑するに値する学識、人格、志、仁徳・・・、全てを備えられた師だと思います。
巻頭の「始終訓」から「野狐禅」から一言一言が人生の糧になる本です。この本に共鳴する人が日本に世界に一人でも多くなればこの世は日本は地球はもっともっと良くなる。だから沢山の方に読んで欲しい。
面白いと思ったところを抜き出しますと、
1.漢字の意味を説明しています。例えば、
○囲みの中で、人が立っているのが「因」と言う字で、人が何かに守られている状況。「恩」と言う字は、因をありがたく思う心が入ったもの。
○人が言うことは、まことでなければならないので、「信」という字ができた。
○また、人が為すと、つまり自然でないと「偽り」になる。
○才能の「才」は、地面から少し出た芽をあらわす。横棒の下は根っこを表す。つまり、才は少し頭が出てきた状況を言う。
○人が貝(お金の意味)の上に立つと、「負ける」となる。お金にたよると負けとの意味。
など面白いですね。
2.東洋的な尊敬の念が大事だということで、「私はあなたを愛している」というよりも「私はあなたに参った」と言うほうがよい。
参るということは、尊敬するものに近づくことであり、あなたに参るというのは、あなたを尊敬するとの意味になり、愛しているという西洋的なことばより、意味が深い。
3.「有名無力無名有力」。有名になると力がなくなりやすい、無名で力を持つようになるべき。
4.橋本左内の啓発録において5つの心構えが書かれている。
「稚心をされ(甘えをなくせ)」
「気を振れ(元気を出せ)」
「志を立てよ」
「学を勉めよ」
「交友を択ぶ」
啓発録については、中国清華大学の紺野教授(日本人)が英訳を書かれておられ、それを拝読させていただきましたが
、安岡先生の解説を読んで始めて意味が分かりました。
5.古い中国に「三上」ということばがあり、如何に自分の時間を作るかを書いている。
「枕上」:寝る前の時間を使え
「馬上」:移動中の時間を使え
「厠上」:便所の中の時間を使え
おそらく相当昔に作られた言葉だと思いますが、
これは現在にも通用すると思います。
私も本を読むのは、電車の中、布団の中、トイレ+風呂が多いので
知らぬ間に三上を実践しているなと思いました。
以上 藤末健三