むろん、小説家の日常は、小説ほどに波瀾万丈でも、突如、偶然、運命的出会いが起こるわけでもない。
　だから、小説家の日常を綴ったエッセイが胸躍る冒険に満ちているわけではない。
　しかし、小説家の日向で温んだ水のような日々にも、それなりの葛藤や闘争や喜悦や悲哀が入り交じっている。

　それを、夜の終わりに、一章ずつ読んで、彼の日々に思いめぐらしてゆくのがいいです。

　本書は著者２冊目のエッセイ集で、小説家としての著者の仕事ぶり、作品の前予告ともいうべき構想の予告についてなども書かれており、更にはパソコン通信やインターネットを始めた当初から現在までについても触れられていて、小説とは違う著者の生活ぶりの一端も見ることができるエッセイ集です。