脇役の皆さんを主人公とした、番外編集といえる巻です。
最初にこれを読んだ時には、主人公・ヒカル以外の登場人物に活躍場面を与える「箸休め」という印象だったのですが、今、あらためて読み返してみると、この作品のテーマである「囲碁」、「才能」といったことを改めて考えさせる作品ばかりです。
最初の「塔矢アキラ」という一編を読むと、彼が本気で囲碁のプロとして活躍していくためには、ヒカル（作為）という存在が不可欠であることがよーくわかる。
三番目の「奈瀬明日美」を読むと、プロ試験には受からず、自分の才能に疑問を頂きながらも、自分の居場所は囲碁を打つことでしか見つけられない人間の厳しさがよく伝わってくる。
五番目の「倉田厚」は私のお気に入り、倉田さんの中学生時代からの非凡さがよく伝わってきて、プロで成功する人間というのはこれくらいでないとダメなんだろうなあ･･･などと思ったり。
単なる箸休めというより、この作品を書き進めていったことで浮かび上がってきた物語なんだなと思いました。