驚異的な演出力
★★★★★
まずあまりにも長いセックスシーンに驚いた。もちろん良い意味で。
普通の漫画なら省略されて当たり前の部分まで全て描き切っているため、この巻の後半は全てセックスシーン。
しかしこの「最初の時のなんともいえない盛り上がり」をねちっこく演出することが、
タカコサマと小津先生のイライラするぐらい引っ張った不実な恋愛の結果として、実にこの漫画らしく描かれている。
そしてこの演出は、小津先生がタカコサマの部屋の前からベッドへ辿り着くまでの過程で、
いくつも後戻りできるタイミングがあったんだと読者に再確認させる効果も持っている。
部屋の前で「2・3分待ってもらえますか」と言われた時、その短い時間で小津先生が冷静になれば引き返せたはず。
玄関からベッドに移動する時だってそうかもしれない。
しかしこれらのタイミングを全て押さえつけて乗り越えてしまうことで、
二人がこうなることは必然だったんだと読者に納得させる力を持っている。
さらにすごいのは、ここまでセックスシーンと書いてきたが、実際はまだ未遂だということ。
連載を追っていない読者はこのままの状態で4ヵ月も待たされるのだ。もうここまで来るとまいりましたと言うしかない。
そして決して忘れちゃいけないのは、今二人がこれほどまでに盛り上がってるのはカオリの存在があるからだということ。
行為の最中もお互いがカオリのことを考えているのがその証拠だ。
おそらくここまでの展開はほぼ全ての読者が予想できたはずだが、今後小津先生がカオリでなくタカコサマを選んだ場合、
果たしてそこに幸せはあるのか、それともやはりカオリに戻るのか、カオリは二人の関係に気づいてしまうのか、
結末は全く予想できないし、おそらく先はまだ長い。
でもそれが嬉しくもあり、またもどかしくもあるのだ。