精神の背徳性がテーマ
★★★★☆
読む前は、ロシアにおける革命運動に参画した人々が持つに至った「無神論」の思想を「悪霊」として描いた
小説なのかと思っていました。
しかし実際に読んでみたらそうではなく、二人の登場人物の精神の背徳性を「悪霊」として描いた物語でした。
その二人とは、人間の生命への尊厳を持たず自分の目的のためには他人を物理的に破壊してしまう
ピョートル・ヴェルホーヴェンスキーと、
人間の精神への尊厳を持たず確たる目的も無く他人の魂を破壊してしまうニコライ・スタヴローギンです。
ドストエフスキーの作品は登場人物が多く、それぞれの性格が一筋縄でいかない上に会話文が饒舌なので
混沌とした印象が残りますが、世界そのもののような謎めいた小説世界はクセになります。
キリーロフ
★★★☆☆
「カラマーゾフの兄弟」の最後は希望というものを感じさせたが、それと対比的に「悪霊」は絶望というものを感じさせる。主要人物のほとんどが自殺し、殺され、惨死しするか、または廃人となっている。これは「あまたの悪霊めは、どこへといそぐ?」のひとつの答えではなかろうか。
幻をみているような読後感
★★★☆☆
古典新訳文庫の「カラマーゾフの兄弟」「罪と罰」で味わった、時代を超えた吸引力・・・を期待していたのだが、難解な上に、背表紙に書かれているあらすじにたどり着くまでが遠かった。かなりの体力が必要で、読了まで上下巻合わせて1ヶ月くらいかかってしまった。
しかも、率直な感想は「スタヴローギンってそんなに悪者か?」だった。下巻の背表紙には「組織を背後で動かす悪魔的超人スタヴローギン」とまで書かれているが、何をもって「組織を背後で動か」しているのか。しかも悪魔的超人って、本当、何を指して言っているのか。本当はいもしない神様(スタヴローギン)の周りで、信者(組織)が勝手にくるくる踊っていただけ、というニュアンスじゃないのか。
物語の外側がスタヴローギンを持ち上げすぎ、という印象が強く残った。他の人のレビューや解説を見ても何だかすっごくアウェイ感を感じるのだが、僕が誤読しているのだろうか?
読みづらいけど、深い
★★★★★
読み物としてなら人気作家の現代小説の方が、読み易いし、物語も面白いと思うが、本書の読後感には非常に深い物を感じる。個人的には、スタブローギン、シャートフ、キリーロフの言葉の中にも、ドストエフスキーの深淵を感じた。特にスタブローギンはこの上ない非道の様に語られることが多いが、誰しも彼のような側面を持つのではないかという皮肉めいたメッセージを込めているのではないか。ドストエフスキーはかなり以前に『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』『地下室の手記』、最近『死の家の記録』を読んだが、最も読んで良かったと思えた。数年後にまた読み返したいと思う。
まだ下巻は読んでいない。
★★☆☆☆
下巻をまだ読んでいない、すなわち、今後の展開をまったく知らないという状態でこのレビューを書いています。
・・・・・・・・・・・難しい!
上巻は下巻のための基礎工事という位置付けなのか、正直、読みにくいです。さまざまな、そしてどうにも奇天烈な登場人物たちのエピソードから人格・立場・関係を把握するのに骨が折れます。会話中に突然、Aは気絶したり、Bは何の脈絡もなくCを殴りつけたり・・といった具合で、「なんだなんだ??」という箇所が何カ所かあります。「罪と罰」以上に難解であり、1回読んだだけでは理解しがたい本なのかもしれません。