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未成年 下巻 (新潮文庫 ト 1-21)

価格: ¥830
カテゴリ: 文庫
ブランド: 新潮社
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この混乱した、残酷な世界からの救済 ★★★★★
 本作は元々複数のプロットがからみあい、複雑なのであるが、第三部になるとさらに複雑化し、混乱した社会を映し出している。
 しかしその中に於いても、第三部から登場するマカールが、清らかな空気を送り込んでいる。彼は主人公の戸籍上の父親で、救いのために長年巡礼生活を続けている。彼の言葉は、ドストエフスキーの理想である「民衆の正教」を表しており、そして彼が話したという或るエピソードは、深い印象を残し、当時のロシア社会を想像しやすくしてくれる。
 また、リーザも相変わらず美しく描かれているのだが、彼女はとても可哀想なことになってしまう。
「しかし悲しい、ほんとうの悲しい言葉は、わたしは特に妹のリーザについて言わなければならない。これこそ――ほんとうの不幸というもので、リーザの悲痛な運命にくらべたら、わたしの数々の失敗などなんであろう!」
 と主人公も書いている。どんな不幸に遭ったかは、ここでは書かないのでぜひ本書を読んでほしい。
 そして、なぜこの世界はこれほど悲痛と苦悩にあふれているのか?――この問いが、次の『カラマーゾフの兄弟』に引き継がれる。そして、あのような名作が生まれるのだ。