村野ミロシリーズ初期に近い爽快さ
★★★★☆
正直色ものと思っていたのでなかなか読みませんでしたが、
案外いい。何となく、出てくる女の人たちが寂しげに凛としてて、
気分がいいし、語り部「近田」は運命に翻弄されていく様が
初期のミロのようで魅力的である。
何しろ、近田が「自分は」というところが気分である。
こういうの男が書いたら実に嘘くさいのだが、
合宿所の臭そーな感じとか、その辺が桐野さんの真骨頂であり、
電車の隣の席でみるみる厚化粧が出来上がっていくときのような
女の薄気味悪さと、その女の鏡に映っているであろう、
男の薄気味悪さみたいのが、松原だのシンギョウジだの浦和ケンジだのに
におっていて
う〜ん、きりのだなぁ、っという感じに十分楽しめた。
ミステリーとしては、何ともシンプルで,
gakkushi、なんでぇ、そんなもんかだけど、最後の火渡はかっこいいです、ほんと
人間描写が上手です
★★★☆☆
殺人事件の種明かしよりも、火渡と近田の人間性に惹かれて読み進められた感じ。「強く、芯がある」火渡と、「迷い、もがき、強い者に憧れる」近田。この人の本は初めて読んだのだが、人間描写が上手なんですね。
それから、普段なじみのない「女子プロレス」という設定だけですでに興味がわく。なじみがないだけに、(失礼な言い方をすると)「得体の知れない」存在だった女子プロレスラーだけど、普通の人と同じようにそれぞれにキャラがあり、悩みや希望があり、学校や会社と同じように人間関係も入り組んで…という当たり前のことを、魅力的な登場人物を通じて知ることができて良かった。
男より男らしく、女より美しい
★★★★★
一読して、すがすがしい風が吹きぬけるような読後感を得た。
作者も「あとがき」で語るように、主人公、火渡抄子はジェンダーを超越した存在として描かれている。あっさり言えば、その生き様は男よりもはるかに男らしく、女よりもはるかに美しい。そこにはより概念が一層純化された「男らしさ」というものがあり、「美しさ」というものがある。
火渡が付き人の近田(一度も試合で勝てたことがない)に対し、どうして勝てないのかを体で教えてやるシーン。そして、体で教えられたにも関わらず、まだわからない近田に火渡が教え諭してやるときの言葉が胸を打つ。並みの男ではとうてい言えない言葉なのである。
謎解きで引っ張られて読みすすめるうちに、読者はいつしか「荒ぶる魂」というものを肉感的に感じ、その魅力に引き込まれていることに気がつくだろう。
女のビルディングス・ロマン
★★★★☆
火渡のモデルは神取忍。それはいいとして、「人(女)は何故、女子プロをやるのか?」。その答えを実は多くの女性は知っているはずだ。そんで答えを活写したのが本書である。「女」のビルディングス・ロマンを描けるステージは非常に少ない。もちろんナースとか女弁護士とか保母あるけども、「女世界」でそれを描出できる場というのは、女子プロ位じゃないだろうか?「男」との権力関係を一旦脇におき、女世界で闘技する空間というのが、成長譚のうえで不可欠だというのは、「やおい」の裏返しともいえる。ともあれこれも著者の女性解放譚の一つのパターンなのだ。
女子プロレス
★★★★☆
の縦社会がとても興味深かったです。女が女に惚れる(レズとかそういう感覚ではなく、なんでしょう、性別は取り払った感情)そんなことはそうないと思うので何故かとても近田が羨ましく思えました。近田と供に火渡の言葉の意味を考え、自分も読み終えた後少し成長出来た様な感覚になりました。