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光源 (文春文庫)

価格: ¥620
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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   桐野夏生の描く女性はカッコイイ。それも、絶世の美女や完璧なキャリアウーマンなどの、現実離れした格好よさとは違う。たとえば、『顔に降りかかる雨』(第39回江戸川乱歩賞受賞)と『天使に見捨てられた夜』の主人公である女性探偵・村野ミロや、『OUT』(第51回日本推理作家協会賞受賞)に登場する主婦・香取雅子。ときに大失敗を犯し、失態も見せる。しかし、彼女たちはその内に秘めているのだ。窮地に追いやられたときに取り乱さない冷静さを、どんなトラブルにでも果敢に立ち向かう豪胆さを。そんなヒロインたちに魅了され、桐野夏生ファンとなった読者は多いことだろう。本書にもまた、人間的な弱さを持ちながらも自身の人生を懸命に切り開こうとするひとりの女性が登場している。

   1999年に『柔らかな頬』で直木賞を受賞して以来、2年ぶりに発表された長編である本書は、映画作りの現場が舞台である。プロデューサーとしての名声を得るため映画の成功にすべてを賭ける玉置優子のもとへ、スタッフが集まった。昔の恋人を見返したい名カメラマン。自分は天才だと信じる新人監督。人気絶頂の二枚目俳優。かつてのアイドル。「いい映画を作る」の言葉の裏に、それぞれの思惑が錯綜し、衝突する。犯罪や事件性は皆無であるが、スポットライトを浴びたいと熱望する人間たちのしたたかな姿が淡々とつづられる本書は、光と影で描かれたサイレント映画のような深い味わいが感じられる作品である。(冷水修子)