英語と日本語の間のちょっとした違いについてのアイデアを膨らませて書いた軽いエッセイ
★★☆☆☆
1989〜1991年度のNHKラジオ「英語会話」テキストに連載されていた、英語と日本語との違いにまつわるエッセイ36篇に、他の媒体で発表されたエッセイ6篇を加えて1冊にまとめた、語学エッセイ。
英語と日本語では言語として様々な性質が異なることは自明である。しかし、これをただ単に異なっているとばかり見るのではなく、異なり方に構造が見て取れれば有益である。英語を専門とする日本語ネイティブスピーカーとして著者は、英語と日本語の言語としての基礎的な違い(例えば、英語の構造の中心には名詞があり、日本語の構造の中心には動詞がある、等)が他の様々な違い(英語の名詞には動詞的なニュアンスが取り込まれていて、日本語の動詞には行為の主体が取り込まれている、等)に派生していく様を平易な言葉で日本語話者に示してくれる。
正直、タイトルから想像した内容と若干開きがあった。英語表現と日本語表現の根底に潜む発想の違いを体系的に論じた本ではなく、比較的目に留まりやすいちょっとした違いについてのアイデアを膨らませて書いた軽いエッセイ。各トピック3〜4ページと文章は短くリズム良く読み進んでいけるが、逆に言うと、その程度の紙数で述べられる程度のことしか述べられていないとも言え、議論が1冊の本として深まっていかないのが残念。
私としてはむしろ、わずか20年前に書かれた本の中の「日本語感覚」が現在の私自身の「日本語感覚」と大きく異なっていることに驚いた。本書の中で「いかにも翻訳調で、これでは日本語になっていない」とされている日本語文の多くが、私にとって全く違和感をおぼえないようなものであったのだ。もともとは英語についての本を読みたくて本書を読み始めたのに、読み終わった頃には「現代日本語の成立と変遷」に興味が出てきてしまった。
英語と日本語の発想の違いが理解できる
★★★★☆
英語と日本語の発想の違いが理解できる本です。なかなか参考になりますね。
英語の発想・日本語の発想
★★★☆☆
この本はNHKのラジオテキストに連載されたエッセイである。従って、大まかな章に分かれているもののその内容は一回ごとの完結で読みやすい。経緯が経緯だけにつまりは構文などから英語と日本語の比較をして英語の発想を自然と身につけることが目的で書かれている。しかし、この本を読むと英語よりも日本語にかえって興味が湧く。英語との違いを出すことによって日本語の特色が書かれるのは良くあることだが、歴史や思想・風俗ではなく現代の生活の中で現れる差異に焦点が絞られているから分かり易くなじみやすい。外山氏のエッセイにおける才能を味わう本としても良いし、実は英語的発想が自然になりつつある日本語表現を確認するも良し。