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英語の感覚・日本語の感覚―“ことばの意味”のしくみ (NHKブックス)

価格: ¥1,019
カテゴリ: 単行本
ブランド: 日本放送出版協会
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いままでにはない、豊かな〈ことばの意味〉の世界へ☆ ★★★★★
 例えば生成文法のような伝統的な形式主義的アプローチが、言語の世界に無理やり計算主義を持ち込んでしまったおかげで見えなくなってしまった<ことばの意味>の織りなす豊かな世界が、認知言語学の“誠実な”アプローチによって再びよみがえったことは、実に歓迎すべきことだと思います。
 「形式が違えば、意味も違う」という前提に従って、いままで“同じ”だとされてきた様々な類似表現の持っている意味の違いに切り込んでいきます。例えば

 I believe John honest.
 I believe John to be honest.
 I believe that John is honest.

という3つの英文は、“書き換えできる”ゆえに同じだとされてきましたし、
学校文法などではいまだにそうだと教えられていると思いますが、
この3つの文の意味(ニュアンス)は微妙に異なっています。

 I felt her trembling. / I felt that she was trembling.
 She asked him to leave. / She asked that he leave.
 I saw him dead. / I saw that he was dead.

上のペア表現も、これまた意味が違います。

まさか、このような意味の違いが“些細なものだから別にいいだろう”と思っている英語教師はいないと思いますが、
特に現場で英語を教えている先生、もしくはこれから英語を教えようとする大学(院)生には、ぜひぜひ読んでほしいと思います。

生徒に“これって同じなの?”と聞かれた時に、どう答えますか?
あなたの英語教師としての力量を、ぜひこの本で伸ばしてみてはいかがでしょうか☆
大御所の言語学(英語学)概論の授業を聞きにいくつもりで ★★☆☆☆
放送大学ラジオ講座の教材4年分を底本に、単行本化したもの(p.248「おわりに」)。元が放送用のテキストなので、全体に一貫性がなく、章ごとに話がいろんなところに飛んでいく印象である。『英語の感覚・日本語の感覚』というタイトルだけを頼って読むと違和を感じるかもしれない。実際、私も「タイトルと内容がずいぶん違う」と感じた。

本書は池上嘉彦という日本の認知言語学の先駆者による「言語学概論」あるいは「英語学概論」を大学の教室で聞きに行くつもりで読むべき本である。そのつもりで読むと、意味論や語用論など言語学・英語学の基本知識が専門用語をすくなめにして解説されているので、読みやすい言語学入門(英語学入門)として一読の価値がある。また、最初のほうで出てくる英語の例は、英語教師には授業で役に立ちそうなものが多い。池上氏がこれまで集めてきた英語の発想を語るのに役に立つ例文がおしみなく使われているので、英語教師としてもストックしておきたいという衝動にかられるのではないだろうか。

ただ、1冊の本としてはあまりに一貫性がない。言語学の本なのか、英語学の本なのか、英語発想を解説した本なのか。おそらくすべて当てはまるというべきだろうが、それぞれに興味にある人にはあまりに物足りないし、「とにかく言葉のしくみを知りたい」という人にも、どちらかというと学問的な解説をした本で、言葉のしくみそのものの解説は存外すくない。

それより、タイトルにある「日本語の感覚」の話があまり出てこなかった。まさか、最後のほうにある俳句などの話を頼んでこのタイトルをつけたのだろうか。この部分に惹かれて購入したので、はっきり言って「ダマされた」という感じである。

NHKブックスは言葉に関する本をたくさん扱ってくれているので感謝しているが、ときどきキャッチーなタイトルをつけた安易なものが混じっているので、最近、疑心暗鬼ぎみになっている。著者が一流なら良いという問題ではない。
根底に深い日英対照洞察力を感じる ★★★★★
日英対照を根本に、伝統的な意味論、形式と意味との関係、意味とコンテクスト、意味変化、文学や文化における意味の表出現象への考察等を扱った本である。

著者のファンである私は、他にも多くの著者の本を読ませていただいた。
今までの本で扱ってきた内容を再び扱っている部分もあるが、その扱うテーマの興味深さ、言語現象に対する洞察の深さ、また扱うテーマの広さに畏敬の念を感じる。
またこの本では特に、「日本語の感覚」を主観性の観点から捉え、英語と比較している箇所があり、そこでは広く日本の伝統的文化現象にも言及がなされ、とても興味深い。
日本語は英語に近づくか? ★★★★★
 今まで読んだ文法や言語の比較の話は、途中で眠たくなって投げ出してしまうのが常だった。ところが、この本は違った。読み進むに従って目が冴えて来た。
 ことばによる表現の特徴が、モノの捉え方、事態の把握の仕方、空間把握の仕方と繋がっているということを、鮮やかに取り出してくれている。私たちが英語を読んだり、英語圏の人と接する時に感じる違和感をいくつも解き明かしてくれている。肩凝りがほぐれていくような爽快さを味わわせてくれた。
 特に感心したのは、言語表現における日本的特徴と、絵画におけるもそれとの関連についての指摘であった。そして英語圏においても同様に、言語的特徴(自己を「主体/客体」に分裂させてひとつの事態を説明する)は、絵画での遠近法となって結実した、という指摘であった。
 その他にもいくつもスリリングな指摘がなされていて、飽きさせない。
 そして、私は最後に次のような疑問がわいて来た。
 英語と日本語の違いは、徐々に小さくなる方向に動くのだろうか? いや、もっと正確に言うなら、日本語は英語的な感覚に近づく方向で変貌せざるをえないのだろうか? ちょうど日本の絵画の世界で、遠近法に従った西洋画が徐々に主流になってきたように。もしそうだとすれば、それは私たち日本語を母語とする者にとってどんな意味をもつのだろうか?
 ちょっと取っ付きにくいが、英語を好きな人も嫌いな人も楽しめる知的刺激にあふれた本。
言葉の感覚 ★★★★☆
 言語とは、外部から与えられたものであり、本当に自分の表現したいものとは、どうしてもずれが生じる。
 子供の言語感覚が、大人には想像もつかないユニークな表現を使うのはその表れである。
 ちょうど、前に読んでいた岩井克人の本と同じようなことが書かれているので、何かうれしくなった。
 いずれにせよ、英語でも日本語でも微妙なニュアンスがあるもので、言葉の感覚を磨かなければと思った。