インターネットデパート - 取扱い商品数1000万点以上の通販サイト。送料無料商品も多数あります。

人間について (中公文庫)

価格: ¥800
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論社
Amazon.co.jpで確認
『人間を内と外から眺めるために』 ★★★★★
 対談集である本書を推薦するにあたり、司馬氏によって紡ぎだされた、医学・生化学界のビッグ・ネームである山村雄一氏とのコラボレートに、焦点を合わせたい。もちろん優れた内容をもつ本書の、数多く含まれる価値のうち、たった一つに目を凝らすという意味なので、誤解の無いよう。
 さて、山村氏は、大阪大学学長を務めたほどの医学・生化学の重鎮であった。少し説明を付け加えると「生化学」という分野は、「生命現象を化学的に研究する分野」である。したがって、DNAやアミノ酸やたんぱく質なども含む幅広い分野である。
 本書は、「生と死」、「生きもの」、「社会」、「科学」、「生命(もしくは科学の)倫理」、などについての対談が収められている。
 本書の美点は、いわゆる「文型・理系」の立場から、人間についての考察を、一般的な知識レヴェルから始めている点にある。これは生化学分野が、好むと好まざるに関わらず、どのように人々に影響を与えるかという、最も重要な点をなおざりにしていないということである。専門家による書物は、「一般的レヴェル」と「あい反する分野」とからの考察が不十分で、いびつなものとなりがちであるが、本書にそれは無い。そして、司馬氏の問題提起が、実に的(まと)を得ているので、初版1983年だが、いまだに有効である。というよりはむしろ、問題が拡大・深化こそすれ、解決された点はあまり無いといっても良いだろう。
 二人の巨頭によって織り成された、人間を考える「きっかけの書」という意義が詰まっている点と、生物を対象とする科学技術問題のパースペクティブを与える格好の入門書であるというこれら二点が、優れている。また生化学への導入書にもなりうる。
 推薦
[生化学に興味をもたれた方には、『遺伝子が語る生命象』(本庶佑 著;講談社ブルーバックス)や、『タンパク質の生命科学』(池内俊彦 著;中公新書)をお勧めしたい。]
会話の妙を楽しむ本 ★★★☆☆
司馬遼太郎の作品では最も売れていないものの一つと思われるが、ファンならずとも読む価値は充分にある、話題にされている内容はじゃっかんの古さを感じさせるが、なるほど会話とはこのようにすべきものか、と納得できる二人の「会話の妙」こそを楽しむ本と評すべきとおもう、

作家司馬の対談相手は大阪大学元学長の医学者山村、

何十年か後の将来、日本人の会話能力に関する研究が成されるとしたら、本書は20世紀の日本人の会話の良い見本として採用されて然るべき、

本書に記録された会話の見事さの対極にあるのが次の二つである、

昨今の日本のテレビはトーク番組が主流、大勢が集まって討論する番組も一定の支持を集めているようだが、あれらは決して「ディベート」とは呼べない、参加者が自身の意見を一方的に述べているか、お互いに揚げ足取りに終始するかであり、1対1の議論になったときの日本人の脆弱さを助長しているのではないかとも思う、

もう一つがすでに日本人男性の主流になりつつあるいわゆる「オタク」の会話である、おれはAを読んだ、私はBを読んだ、僕ははCを読んだ、と一種の独り言の繰り返しでお互いを慰撫しあうような会話のことである、

両者に共通するのが「聞き下手」である、人の話を聞くよりも自身が話すことばかりが優先される人格の氾濫は誰にとってもじつに不幸な現象であろう、

あんな話し上手の人はいない、とみんなに誉められる人が、実は本人はさっぱり話さずに熱心に人の話を聞き続けられる人だった、という笑い話を思い出させる本です、

根本は変わらない ★★★★★
この本は対談集だ。章立てて論考を加えたような本ではない。司馬遼太郎、山村雄一の二人が人間についての何回かの対談が本になっている。

範囲は多岐にわたるが、書かれた議論のほとんどは今でも燻ぶっている。いわば根本に近いものだ。最近の上っ面だけを眺めた繰り返しばかりの議論ではなく、結局の所という側へ視線が向いている。その点で古い本だからあまり価値がないということはこの本にはありえない。