視野が広い!
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エンタープライズITのあり方について、テクノロジーの視点、利用企業の視点、グローバルな知見、日本の産業競争力の視点 など、実に様々な視点から述べられている。
メディアの方の著作にありがちな扇動的な語り口でもなく、妙な明と暗の二項対立的な決め付けでもなく、自らが体感してきたことをベースに実践・実業としての語り口で語られていることに、深みを感じると同時に共感を覚える。
記憶にある限り、ITに関する著作で、このような視点と語り口を持った著作を目にしたことがない。
自分としては、米国発のテクロノジーを過大に評価したり、畏怖することもなく、欧州などの状況もしっかりと踏まえながら論じている点が非常に新鮮であった。
クラウドを越えて
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クラウドコンピューティングやiPadなどの最近のキーワードから始まって、その先の日本のIT産業が向かう方向について論じた本。NTTデータ前社長で現在は情報サービス産業協会(JISA)会長を務める浜口氏の最新作です。前著以上に鋭くIT業界が抱える問題に切り込んでいるのは、氏が業界全体に物申す立場になったからでしょうか。IT産業に関わるすべての人が目を通しておくべき好著。
「日本がITでもっと豊かになってほしい」という想いを感じる
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著者の前著「社員力」が面白かったので買ってみた。
社員力は現役社長のビジネス指南書で良いことかいてあったけど、こちらは経営の一線を退いて業界トップになった立場からの、また違ったメッセージの本。著者自身が、多くの海外識者たちと重ねてきた議論で感じたことが詰まっている。
冒頭、キンドル、クラウド、SOAといったトレンド・ワードを並べつつも、著者の年代なりの深みを感じる解釈。中盤、日本人論や国家論まで広がっていく。結局、日本人であることからは逃れられないという認識をもったうえで、グローバルな環境での強みを考えていくべきという主張は納得。終盤は、IT業界が長い著者らしく業界の濃い目の話になっていっていくが、一業界人としては今まであまり考え及ばなかったことが書いてある。
全般のトーンとして、日本がITでもっと豊かになってほしい、もっとうまく使いこなせるはず、という著者の思いが伝わってくる。立場が変われば、主張も変わってくるですね。よくあるITの価値を切々と述べながらITで商売したい人の本だったり、日本や業界を自虐的に憂うだけの本ではなく、うなずくところは相当多かった。