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虎よ、虎よ! (ハヤカワ文庫 SF ヘ 1-2)

価格: ¥945
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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精神の爆発 ★★★★☆
プロローグを紹介してしまおう。
ある科学者が研究をしている。それは、人は死の危険が近づいた時、瞬間移動能力を発動するというものである。死の恐怖は、瞬間移動能力を発動するというものである。
(これって、藤子・F・不二子先生のエスパーマミがパクッてるよね。つまり、その元ネタである)
まあ、中盤が読んでいてダルいのは認めよう。
しかし、この小説は、おれが自分の手で脚色して映画化したいSFの第一位である。
とびっきりのエンターテインメント ★★★★★
続きが気になる。でも読んでしまうのが勿体ない。そんな最高の読書体験の一つです。

猥雑で豪奢なビジュアルイメージと頽廃的な未来像。王道のストーリー。
主人公がぐいぐい自力で道を切り開いていく成り上がりっぷりは気持ちがいいです。
陳腐ながら個性豊かなキャラクター。女性キャラのやっつけぶりはご愛嬌。
そして何よりも、圧巻のラスト(解説のある部分を読んだら魅力が半減するのでご注意を!)。

個人的には暗い最後だとは思いません。
鬱憤をスカッと晴らしてくれるこの読後感に中高生時代に出会いたかった。
「無気力うぅ〜」なんだけれども、その後になったりすると「熱血うぅ〜」だったりする。 ★★★★★
萩尾モト『スターレッド』のクライマックスシーンに
強い影響を与えたと思われるのが、本作のラスト近くで
描かれる「感覚融合的」な「時空間ジャンプ」のシーン。

昨今では映画『ジャンパー』の影響か、テレポーテーション能力が
「空間ジャンプ能力」と言われる事が多いようだが、本作では
偶然、発見されてしまった人間の持つ潜在能力として描かれ
「ジョウント能力」と呼ばれている。殆ど、すべての人間が
訓練しだいで身に付けることが出来るので、現実世界に
当てはめると「自動車運転能力」のようなものである。
実際に、作品中では単なる「移動手段」として扱われ
殆ど「通勤手段」の様に日常的な「行為」と為っている。

主人公は最初は、兎に角「無気力うぅ〜」である。宇宙貨物船の
下級乗組員だったが、船が遭難し唯一人生き残り、
難破船の中で「後は死ぬだけ」と思っていると・・引きこもりの
大学生みたいである。・・突然、
宇宙空間を一気に飛び越える「ジョウント能力」に目覚めてしまう。
この「覚醒」により、極端にドラマチックな「復讐劇」が
開始される。・・何か、東大入学後3年目か、4年目のホリエモンの
ようでもある。・・

で、その後の「熱血うぅ〜」の部分はこのレビューでは扱わない。
興味を持たれた向きは実際に読まれたし。
これが「SF」だ! ★★★★★
 ベスターの長編第2作。歴代SFベスト5入りの常連として有名な名作で、よく言われる評が、「10年に1度の傑作」。
 30数年前、初めて読んだSF「宇宙船ビーグル号 (ハヤカワ文庫 SF 291)」(A.E.V.ヴォクト)で、世の中にこんな面白い種類の小説があるのか、とSFにのめりこんだが、なかでもこの「虎よ、虎よ!」の衝撃は特に忘れがたい。
 読了の瞬間、自分のいる場所がわからなくなった、と言っても信じてもらえるだろうか。ストーリーもほとんど憶えていないが、これが「世にも珍しい、再読を許さない傑作」であるとわきまえているので1度しか読んでいない。むしろ設定やストーリーといった、小説としてのパーツやテーマなどを分析しだすとアラばかり目につくだろうこともよくわかる。
 つまり、これは「体験」なのであって、二度はないし、繰り返しもないのだ。そしてこれこそがSFの感動なのだ。
 小説として読むなら、この前作にして作者の初めての長編SFである「分解された男」が断然お勧めである。わかりやすいし、実にエネルギッシュな傑作。これ1冊でもSFの歴史に名を残すと思われるのに、ベスターはさらに先に進んで、第2長編で不朽の名声を手に入れることになった。ただし、満々たる自信でもって発表されたこの作は発表当時、激しい毀誉褒貶(最高!と、最低!)にさらされ、現在の評価が定着するまで10年以上かかっている。(そして毀誉褒貶はおそらく、今も変わらない!)
 最高のSF作家としてはベスターの名は挙がらないかもしれない。ベスト10には入れても、レムやディックといったノーベル賞級の作家と同列とはいかないだろう。しかし単独作品としての「虎よ、虎よ!」は、すべてのSF作品を超えて世界最高・唯一無二といえる。この、類のない強烈な感動はSF以外の「普通小説」では存在しないのだ。この作こそが「SFだ!」といえる。
 ちなみに、「虎よ、虎よ!」を「アメリカSF唯一の傑作」とたたえるSF作家サミュエル・R・ディレーニイの「バベル17」をご存知だろうか。これは舞台が「虎よ、虎よ!」、ストーリー展開が「分解された男」というベスター・リスペクトの最高の1作である。
バベル17 (ハヤカワ文庫 SF 248)
文章を読む快楽 ★★★★★
SFというジャンルでありながら科学的根拠無し、超ハイテンポのストーリー展開は軽薄と捉えかねない。しかし、この物語は面白い。豊富なアイディアと巧妙緻密に練られた構成は、純粋に文章を読む快楽を与えてくれる。豪快・緻密・テキトーさが極端な所がアメリカっぽい。 ティーンエイジャーの頃の新鮮な感覚が呼び起こされる。