「ホラー」ではないと思われる。
★★★★☆
「ホラー」にも色々あるわけですが:本作は純然たる「ホラー」ではないように思います。登場人物にして被害者である少女にとっては紛れもなくホラーな体験となったわけですが。観る者の視点では、本作を「ホラー」と受け止めるのに一抹の躊躇を感じられた方も少なくないのでは?特殊メークやCG駆使しての残虐シーンがあるわけでもなく、ひたすら「やばいことになっていく」その過程自体を淡々と描写した一品です。その淡々さぶりがかえって精神的残虐性を強調することになるのですが。むしろ、少女に淡い恋慕を抱きながらも助けられないでいたあの少年、彼の、少女との出会いから始まった郷愁漂う幼い恋心の描写を追うことの方が、本作品を観る上での主眼になっていたような。二人が出逢った時の甘酸っぱさはこちらにも伝わって来ます。自身のティーン時代の記憶と重なりますね。二人が最悪な形で別れることになった時の描写は、さすがに同じ体験をしているわけではないので前者程にはシンクロできませんでしたが、でも、少年の、心臓が八つ裂きにされそうな哀しみはすくい取ることができたように感じました。ちょっと刺激的・暴力的なエピソードを交えながらノスタルジーに浸りたい方、等にはいいかもしれません。少女をいかにむごたらしく虐めたか、という点のみに興味が一点化する方にはあまり向いていないと思います。
実話だと分かってショック
★★★★☆
原作はこのDVDを観てから読みました。DVDも原作も後味が悪く、調べたところ、実際にインディアナ州で起きた「シルヴィア・ライケンス事件」を元にして描かれた話だと分かってショックを受けました。(シルヴィアの写真も掲載されています)
ネタバレになるので言いませんが、加害者達のその後が実話とは大きく違っています。実話の方がやるせないです。
現在二人の子持ち、私自身も子供時代に虐待された経験があるので、虐待問題については過敏に反応してしまいます。
非常に考えさせられたDVDでした。
よーわからん
★★★★★
まぁ、映画として いろいろ問題のある作品やな。
実話をもとに作ってるにしても もうちょっと どないかならへんかったんかなぁ。
なんにも残らへん。
感動したッてゆーレビューもあったけど、どのへんがそーなんかも解らへんかった。
このへんも 視聴する側の体験とか性別とかが関係するんやろか?
たとえば、オレは男やから 単純に主役の男の子に100%感情移入するんやけど、女の人が観たら はたしてそうなのか。
虐待されてる女の子に多少なりとも感情移入するんじゃない?
そういやー以前、スリーハンドレットを女の友達に薦めたら「何じゃこりゃ」ッてゆー感想が返ってきた。
そんなもんなんやろね、たぶん。
よって、観る人次第であるが 星5。
ま、個人的にオススメかと聞かれりゃー たぶん「やめとき。」と答える。
あと、変な勘ぐりかもしれんけど、もしかして ここのレビューを宣伝の場所として 映画関係者が投稿したりしてへん?
なんかこう...ジックリけーへんレビューが たまにあるんやなぁ...
ベタ褒め、みたいな。
なんてね。
良心的な映画化作品
★★★★☆
原作はどこまでも壮絶で、凄惨な作品だった。僅かにすら救いがなく、本当に残酷な場面では敢えて語りを省略してしまうことで却って読者に痛みを共有させるなど、読んでいて苦痛を味わう、自分自身の闇の部分を突きつけられる作品だった。豊島圭介がコメンタリーで語っている通り、「自分自身も甚振られるメグの描写に興奮してしまう」ということに恐ろしさがあった。
今回の映画版はおおむね原作の展開を丁寧になぞっているし、巧くまとめている。描写も、映画という制限の多くなりがちなメディアとしては相当健闘してその凄惨さを何とか再現している。
しかし、豊島圭介が指摘したように「共犯性」は意図的に薄められている。原作にあった最大の特徴であった部分が薄められているから、原作を読んだ上でこの作品を観ると「甘さ」を感じてしまう。ケッチャムなら、このラストは許さないだろう、と思ってしまう。
ただ一方で、この作品が敢えて原作から変更して与えたこの「甘さ」がこの監督或いは制作者の優しさでもあるように思うのだ。実際、原作を読んだ時に感じた言いようのない絶望感や悲しさ程のダメージは受けなかった。それが物足りなくも感じるし、救われたような気にもなるのだが。
原作の凄惨さを薄める代わりに、原作のもう一つの重要要素であった「ボーイ・ミーツ・ガール」(少年の初恋もの)の要素を強調し、悲恋の物語としての側面がより印象に残る。
原作とまったく同じことをしたから良い映画、とはならないように、制作者が原作を解釈し直し、きっちり枠内に収めて作った、という意味で、そして原作の凄惨さを一定のレベルで描いたという意味、この作品は極めて良心的な作品である。(ちなみに直接的な暴力描写だけであれば今ならソウシリーズなどの映画の方がよっぽど残酷だが、それとは違い「肉体を傷つけることは精神を傷つけること」というおぞましさを描いている本作は、間違いなくソウよりも感じる苦痛が大きいと思う)
但し、原作にあった程の破壊力・傑作と断言できるだけのパワーは薄れているのも事実。欧米ではDVDスルー作品だったこともあり、低予算で役者や一部の映像にチープさも感じる。
それでも、この作品は観る価値の映画だと思う。
”怖さ”の内容に少し変化あり
★★★☆☆
原作では主人公が虐待を止めたいと思いつつも
メグが苛められる様子を”喜んでいる部分”もある描写が
すっかり消えているのが少し気になりました。
どんな人の中にも気高い部分も善良な部分も
汚い部分も醜い部分も入り混じっている、
好きな女の子を酷い目から救いたいという部分も本当だし
虐待される様子に興奮する部分も本当。
どちらが本当の主人公、なんて話ではなく
高潔な部分も薄汚い部分も混在しているのが人間。
その自分の中の薄汚い部分を「あってはならないものだ」
「消し去らなければならない」と否定して消して
綺麗に清らかになろうとするのではなく、
薄汚い部分を「そういう部分も自分の中にある、確かにある」と
自覚した上で、目を逸らさずにしっかり見た上で、
それを制御しなければいけない。
自分の中にある汚い部分を「消そうとする、最初から無い事にする」のではなく
「しっかり自覚した上で、制御する」のが本当に倫理のある人間。
映画では「虐待する人間達は心底の悪。最初から悪。
主人公達は清らかな善人。悪い部分なんて欠片も無い。
虐待する人間達は”あちら側”。主人公達は”こちら側”。
まったく違う人間なんですよ〜。虐待する人なんてモンスターですよ〜」
という描き方なので逆に恐怖感が減っているような?
自分の中にある汚い部分を「そんなものは最初から無い。私は清らか」と
目を背けて否定していると、何かの弾みで”あちら側”に落ちかねないよ、
”あちら側”は遠い世界でも違う人間でもなく、貴方のすぐ側に地続きで繋がってるよ…。
というのがケッチャムの書いた恐ろしさだったので、
映画もその雰囲気を継承していればもっと良い作品になったと思います。