重量級ピアノトリオの傑作
★★★★★
マッコイ・タイナーの数あるピアノトリオによるアルバムの中でも屈指の傑作だと思う。エルビン・ジョーンズ、ロン・カーターという最高のサポートを得ての脂の乗り切った70年代半ばのマッコイゆえ当然の結果だといえるかもしれない。それでも気負いがなく、それぞれが実力を出し切ったトライアングルのバランスの良さは出色の出来であろう。チェンバロの使用には賛否両論があるかもしれないし、若干の受け狙いの感もあるが、それほど鼻に着くというほどでなく、むしろ話題性という点で成功しているのかもしれない。しかしそれ以上に選曲の良さでこのアルバムは光っている。ONCE I LOVE やRUBY,MY DEARの美しさは彼の円熟の境地を示す名演であろう。マッコイはモンクをかなりリスペクトしているのではないかとかねてから思っているが、このRUBY,MY DEARはモンクス・ミュージックの精神を見事に自分のものにしてる。そして何よりもマッコイにはカーター、エルビンがよく似合う。この相性の良さが傑作の前提であることは言うまでもない。