そうした状況の中、元ジョン・コルトレーン・グループ出身のマッコイ・タイナーもレギュラー・バンドを結成、新たなスタートを切った。しかしそのアプローチは、元マイルス一派とは明らかに異なるストレートアヘッド・ジャズ路線。力強く、エネルギッシュな演奏は、亡きコルトレーンのスタイルをマッコイ流に継承したものだった。マッコイの新路線は、軽いジャズが主流になりつつある時代にそぐわないかとも思われたが、実際は絶賛の嵐だった。ジャズに必要な情動性と精神性、パワーとスピードがあったからだろう。本作はその姿を鮮烈に記録した作品であり、本作を抜きに70年代のマッコイは語れない。(市川正二)