これは社会的な問題なんですか?
★★★☆☆
事例の列挙や、仮説の提示はおもしろいのですが、そもそも仮説が提示されるべき説明を
要する現象自体が観察されているのか疑わしい。
モンスター・カスタマーが本当に増加しているのか、「お客様」の暴言・暴行の程度が本当に
質的に悪化しているのか、それが示せていないかと。
犯罪の増減傾向や凶悪事件の加害者となる年齢層の推移については、“最近の若者はなっ
とらん” 的で “近頃、世の中がおかしくなっていて嘆かわしい” 的な印象は反駁されているの
で、「お客様」の暴言・暴行の程度についても、同様のことが当てはまるのではないかなあと思
いますし、さらに「モンスター・カスタマー」という類型は近年の構成物だから、統計的な経年変
化も追跡できないのでは?
定性的な国際比較には可能性があるかなと思いますが(「日本の労働慣行はクソ」的な議論も
ありますしね)、本書では国際比較には踏み込んでいませんし。
個的で偶発的な体験談を超えて、社会的な傾向を見出せるのかどうか、非常に疑問。
一方で、示唆に富む部分も多々。
本書は、消費行動におけるサービス提供側(店員さん)とサービス購入側(お客様)の対面
的場面に、主に焦点を当てています。
しかし、むしろ経営的な(つーか、ネオ|ポスト・マルクス主義的な?)観点から、やっぱり「疎外」
の再生産とか、拘束的な強制の解放的な利用(意図せざるってやつ?)とかのトピックが見ら
れるわけですな。
それにしたって、そもそもの前提の存在には、本書だけでは合意できません。