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書物の運命

価格: ¥2,000
カテゴリ: 単行本
ブランド: 文藝春秋
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わからなくても面白い ★★★★★
偶然手にした本。特に中東に関心があるわけでもないし、紹介された本を実際に読む日がくるかどうかもわからないけれど面白かった。何より著者と書物との関わりが凄い。今時の日本にもこんな教育を受けた人がいるのかと驚いた。TVは無いがおびただしい本と雑誌に囲まれた環境。祖父、父、著者と三代続いた教養人のDNA恐るべし。氏の筆にかかると難しい本も読んでみようかと思わせられる。また氏のエジプト滞在時の話も興味が尽きない。
池内恵恐るべし! ★★★★★
氏が国語を習っていた幼少時代、読書感想文なるものを書いたであろうが、それを評価できた教師は、きっといなかっただろうと思った。こちらでは、読書人を「本を読む馬」というが、私などは、氏に比較したら駄馬のその下だ。中東問題が福祉国家を揺るがす重大問題であるが、人権問題に話題が集中し、焦点がぼけがちである。英訳が出版され、世界の池内になる日が近いことを望む。氏の誘ってくれる道に沿い、書物を求めようと思う。
成熟してるよ! ★★★★★
もう驚きません。結局、”中東問題は日本問題”との指摘は。この領域でも、同じような連中が、日本の近代の病理に悩まされ、大学という西側の近代の制度が生み出した”便益を享受しつつ”、詭弁とターミノロジーを操りながら、”ある種のねじれた心理”に追い立てられ”われわれの近代ではないものが、きっと向こう側にあるはずだ”という”西欧崇拝とは逆の幻想”を追い続けてきた”というわけです。著者は、決して、”夜中に起きてきて、寝ぼけた発言をしている文学者みたいなもの”にはなりたくないとまで言い切っています。もっとも、この作品には、それ以外にも、参考になる硬軟様々な情報がいっぱいです。文献学的な部分では、durrellのalexandria quartetとforsterのalexandriaとの関連から、イスラムと西洋文学の交差する部分を追及していく部分は、”逃避と息抜き”との著者の言説にもかかわらず、見事です。また、時差の持つ本質的な拘束は貴重な指摘です。それ以外にも必ずしも、中東やイスラムのみに偏らない書物がたくさん取り上げられています。ところで、著者が待望する、”durrellのような、alexandria quartetのような作品を、日本の作家が書く日は来るのか?"という問いは、深い意味がありますね。一番の題材となるはずであった、満州での経験も決してそのような作品には昇華はされていないようです。
イスラム理解の問題点にサイード批判まで盛り込んだ、軽くも重くも読める一冊。 ★★★★★
 池内恵の書評集だが、書評されている本がアラブ中東系の書物中心で比較的テーマ性があるため、散漫にならずに楽しめる。書評そのものは時事的に少し古びたりしている面もあるが、ときどき間にはさまっている文は非常に秀逸。特にルイス『イスラム世界はなぜ没落したか』の書評を契機とした、サイードとその盲目的追随者たちへの批判は必読。サイードのルイス批判は論理的なものではなく、むしろ正統なアカデミズム的手法に対する通俗評論家の揚げ足取りに近い、という批判にはハッとさせられる。

 そしてそこから、「イスラーム」というものを妙に特別視し、往々にして反米のツールにしてみたり、文化相対主義を主張するための都合のいい口実にしたりする一部知識人への批判が展開されるのはたいへんに読み応えがあると同時に、われわれ一般読者がそうした言辞を読む際にも留意すべき点であろう。イスラームではこうなんだから、と言うだけでは何もならないし、そのイスラームすら現在変革を迫られていると言える、変なものわかりのよさを廃した誠実さにも好感が持てる。エッセイ風の読み物もあり、軽くも重くも読めて大変に有益。