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君も雛罌粟(コクリコ)われも雛罌粟(コクリコ)〈下〉与謝野鉄幹・晶子夫妻の生涯 (文春文庫)

価格: ¥770
カテゴリ: 文庫
ブランド: 文藝春秋
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型破りだが共感できる ★★★★★
結婚後は鉄幹の女性関係に苦しめられる晶子であった。やがて鉄幹と晶子の名声は逆転し、仕事もなく傷心の日々を送る鉄幹に、パリへの留学を勧める晶子。そして、家計は貧しかったのだが、晶子一人の力でパリへの留学費用という大金を捻出するのである。晶子はその後、9人の子供たちを残し、鉄幹を追ってパリへ行く。渡辺淳一は「同じ男に二度目の恋をして、ただ鉄幹に会いたいがためにパリへ行った」としているが、女の立場から見ると懐疑的である。自分の血が滲むようにして作ったお金で、悠々と留学生活を送る鉄幹。日本に残った自分は借金を返すために仕事に忙殺される毎日。そんな理不尽に耐えられなくなったのでは、と思う。しかし、日本に残した子供たちのことが気がかりでたまらなくなり、予定を切り上げて早々に帰国する晶子は、子供たちのことを気にもせずパリで浮かれている鉄幹に異質なものを感じる。このあたり、女性としてはかなり共感できる。
下巻は鉄幹と晶子の関係の変遷が面白い。夫婦とはなんぞやと考えさせられ、多くの教訓を含んでいるように思う。
型破りだが共感できる ★★★★★
結婚後は鉄幹の女性関係に苦しめられる晶子であった。やがて鉄幹と晶子の名声は逆転し、仕事もなく傷心の日々を送る鉄幹に、パリへの留学を勧める晶子。そして、家計は貧しかったのだが、晶子一人の力でパリへの留学費用という大金を捻出するのである。晶子はその後、9人の子供たちを残し、鉄幹を追ってパリへ行く。渡辺淳一は「同じ男に二度目の恋をして、ただ鉄幹に会いたいがためにパリへ行った」としているが、女の立場から見ると懐疑的である。自分の血が滲むようにして作ったお金で、悠々と留学生活を送る鉄幹。日本に残った自分は借金を返すために仕事に忙殺される毎日。そんな理不尽に耐えられなくなったのでは、と思う。しかし、日本に残した子供たちのことが気がかりでたまらなくなり、予定を切り上げて早々に帰国する晶子。子供たちのことを気にもせずパリで浮かれている鉄幹に異質なものを感じるあたり、女性としてはかなり共感できる。
下巻は鉄幹と晶子の関係の変遷が面白い。夫婦とはなんぞやと考えさせられ、多くの教訓を含んでいるように思う。
それぞれの時代の短歌・資料が見事なタイミングで挿入されている ★★★★☆
反「明星」派からの批判や、有力な同人のあいつぐ脱会などにより「明星」の売り上げは停滞し、ついには廃刊となってしまう。寛(鉄幹)は晶子の陰にかくれ、無用の長物となりつつあったのだ・・・。ある日、蟻の巣をじっといつまでも見ている寂しげな寛(鉄幹)を見てしまった晶子は、かつてから行きたがっていたパリ行きを薦める。寛(鉄幹)を送り出した晶子は、虚脱感に襲われ、パリへ行くことを決心する・・・・。

作者の「冬の花火」・中条ふみ子のように、与謝野晶子単独で主人公になると思われがちだが、この本全体を読んでそれが無理なことに気づく・・・「君も雛罌粟われも雛罌粟」と言うように2人を主人公にしなければ晶子の人生そのものが成り立たないのである。それほど深く2人は複雑にからみあっている。少女のように鉄幹を愛し続けた晶子、晶子に愛され続けた鉄幹・・・・

晶子と鉄幹のそれぞれの時代の短歌・資料が見事なタイミングで挿入されていること、的確な短歌への評など、全てを通してさすがである。