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与謝野晶子歌集 (岩波文庫)

価格: ¥840
カテゴリ: 文庫
ブランド: 岩波書店
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古い歌人という印象だが、感性は現代に最も通じているのではないか ★★★★★
馬場あき子氏は解説で、「・・・(夫)寛の死後、晶子の詠む歌は、あらゆるものが挽歌になった。万葉以来の女の挽歌がなぜか愛の歌となりやすかった伝統のままに、喪失したものの深さを、愛をもって埋めるかのように、一切のものが歎きの深い律とともにうたい出されている。・・・」と述べている。古い歌人という印象に比べて、歌は現代の感性に通じているし、寧ろ現代に先行していたと大胆に言えるのではないだろうか。いくつか歌を引用しよう。

やは肌のあつき血潮に触れも見でさびしからずや道を説く君
何となく君に待たるるここちして出でし花野の夕月夜
牡丹うゑ君まつ家と金字して門に書きたる昼の夢かな
やはらかき少女が胸の春草に飼はるるわかき駒とこそ思へ
半身にうすくれなゐの羅のころもまとひて月見るといへ
思ふ人ある身はかなし雲わきて尽くる色なき大ぞらのもと
さきに恋ひさきにおとろへ先に死ぬ女の道にたがはじとする
男きて狎れがほに寄る日を思ひ恋することはものうくなりぬ
十月は思ふ男の定まれるあとの如くにのどかなるかな
おのれこそ旅ごこちすれ一人ゐる昼のはかなさ夜のあぢきなさ
わが閨を鼠走る音ききて身の棄てられしはてと思ひぬ
春の水君に馴れたるこころともわが思ひとも見ゆる夕ぐれ
青空のもとに楓のひろがりて君亡き夏の初まれるかな
いつとても帰り来給ふ用意ある心を抱き老いて死ぬらん
わが閨に波の音添ひ浦島が子になりしごと寂しき一夜
信濃より今立ち去ると言ふきはに君を悲しむ初めの如く