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ストリートワイズ (講談社文庫)

価格: ¥660
カテゴリ: 文庫
ブランド: 講談社
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「戦後民主主義」の差異 ★★★★★
著者である坪内さんの感じ取った『同時代性』とも言うべき世代としての括り方に非常にセンシティブで、どんな方の発言で、どんな形で、どんな流れにおいて、またどのような文脈によって、またその当時の重要と思われる関係者との立ち位置との関連までもを考え、頭に置いてからこそ正しく理解出来るという、とても丁寧なスタンスがたまらなく面白く感じました。そしてその丁寧さに公平さを感じますし、正しさも感じます。ただ、とても難しいことでもあると思いますが。


とても幅広く、様々な方の本を時代性を感じつつ受け止めるその姿勢が、好まれる人も、また苦手に感じる方もいらっしゃるでしょうけれども、公平で事実により近づこうとする姿勢を保つための対価としては見落としされがちのもので、それはとても重要だと思います。その時代でないと感じ取れないまさに「同時代性」というものに非常に敏感であられるのはそのためではないか?とも思います。公平さや正義というのは本来非常に手間がかかるものだと思いますが、そのことに自覚的であるのは心地よいスタンスです。


また、非常に「同時代性」に関わる問題としても、「1回性」(最初に訪れる出来事、その出来事は時と場所を選べない)ということにも考察が鋭く、この1回性こそが、同時代性を生むことだとも考えます。誰しもが逃れられない同時代性の要として。だからこそ、坪内さんが同時代性に拘っているのだとも思います。この本の中では様々な事柄(福田恒存さんについて、丸山真男について、戦後民主主義について、そしてプロレスやパチンコ、あるいは原辰則、「ぴあ」等々)について扱っているものの、一貫して同時代性を通して眺めるまなざしを私は感じました。


中でも気になる話しはやはり戦後民主主義の話しです。
「戦後民主主義」という言葉の定義をはっきりさせてから論じるのが一般的なテクストであると私は思いますし、その方が誤解が少なく、自身の意見を出来うる限り正しく認識してもらう為にも、必要である、と思っています。いや、いました、この坪内さんの「あいまいな日本の『戦後民主主義』」を読むまでは。


私の受け取ったこの書き方のスタイルの凄さは、定義があいまいなものに対して、あいまいであるままに、ある程度読み手の自由度を残しつつも、読み終わったときに自身の言葉から立ち上がる意味(多くの人が認め合える意味を定義とするなら、それとは微妙に違った個人の肌で感じ取った、集積した意味)が何を含んで、何を含まないのかを考えざる得ない強要を思考的にしてくる、ということです。坪内さんの世代と私の世代でも、もちろんギャップがあって、「戦後民主主義」の捉え方はまた違うと思いますし、大人になった後でなら、指摘出来る事であったとしても、その当時はなかなか違和感があったとしても気がつけない物事でもあると思います。私はまだ、橋本さんの言う「原っぱ」はあった、と思いますし、どんな世代であっても子供だけの暗黙のルールが形成される場は存在すると思いますが、少なくなれば少なくなる程、自覚できる確立は下がるわけで、もっと「原っぱ」に変わる何かがあって良かったとも思います。そして、坪内さんの「戦後民主主義」への定義を最後に持ってくることで、気がつかされ、そして考えざる得ない状況に陥れるのが凄いと思いました。


世代的に共通前提として、そして普遍性の世代間格差についても、あらかじめあったものと、そして後から導入されたものとの差異を感じ得ない差を、言葉にして共通前提にしていかなければいけないことの重要性も、認識できました。「戦後民主主義」という言葉からの連想の違いを埋めないで話しを続けることの気持ち悪さは共有できますし、「戦後民主主義」の偽善性は「世間」や「建前」を感じる機会を作ったという意味では振り返ると、良かったということでもあるとも思います。もちろん、その時は嫌な、気持ちの悪い出来事として認識されますが。


私は個人的には「戦後民主主義」にはあまり良いも悪いもなく、責任の回避とか、無限の可能性とか、世間とか、偽善だとかを連想させますが、それでもある程度の必要性があったとも思いますし機会の均等という公平さも持ち合わせているかな?と考えます。


「戦後民主主義」という言葉に興味のある方に、物事を公平に見るとはどういうことか?に興味がある方に、オススメ致します。