たとえば日清戦争の記述など、意外に要領を得て、ある程度詳細だ。
坂の上の雲などと比べてみても、必要な知識が充分に語られており、しかも船と海戦を良く知る人の、的確な視点が光る。
清国の横陣に対して、縦陣で攻める日本艦隊。
主力の比叡・扶桑は鈍足のため追いつけず、やむなく敵中を分断突破したというあたり、あたかもネルソンの時代のような戦いぶりだ。それでも沈まなかったところをみると、的確な判断だったのだろう。
そうした細部にまで目が届き、この海戦の勘所に迫る手がかりが随所に見られる。
やはり著者は、大海軍記者であったのだと深く感心した。