旧作ファンには懐かしい顔ぶれ
★★★☆☆
本書には『書斎の死体』と同じゴシントン・ホールを舞台に同書のヒロイン(笑い)バントリー夫人が再登場し、また『予告殺人』『パディントン発4時50分』に続きクラドック警部が三たび登場、その上『牧師館の殺人』の登場人物たちのその後の消息が伝えられるなど、旧作ファンには嬉しい限りだろう。
しかし、シリーズとしてではなく単独作品としての本書には、動機が一風変わっているという以外、見るべきものが何もない。
まず第1に、同様のプロットの作品レビューでも言及していることだが、このプロットは必然的に犯人が露呈してしまうため、犯人の意外性は期待できない。
また、第1の殺人の後、コーヒーにヒ素を入れたり第2の殺人で青酸を用いたりするのは不自然。
何種類もの毒薬を入手するのは手間と発覚のリスクを伴うので、誰でも入手できる第1の殺人と同じ毒を用いるのが自然というものだろう。
さらに、第2と第3の殺人の被害者たちはどうやって犯人を恐喝していたのだろう?
犯人にはある人物が危惧を抱いてぴったり貼りついていたはずで、両者がコンタクトをとるような機会はなかったはずである。
同じ理由で、そのある人物の目を盗んで犯人が犯行に及ぶのも無理に思う。
憎悪が生んだ悲劇
★★★★☆
普通ミステリーって犯人にはお世辞にも
同情できないものが大多数を占めていますが、
この作品に関しては例外ですね。
真実を知ったとき、非常に悲しいものがありました。
それは読者が後半部分で犯人の真意がわかれば
おのずとうなずけてくるはずです。
ただこの作品、あまりトリックはひねりはありません。
読んでいて次々ページを繰る感じにはあまりなれなかったので
星は1個マイナスです。
風俗小説としても読ませる
★★★★☆
クリスティーのなかでは、世評では中の上のトリック(ミスディレクションぶりや、物語構造)だろうが、映画『クリスタル殺人事件』の豪華配役(ロック・ハドソン、リズ・テイラー、アンジェラ・ランズベリー、トニー・カーチス、ジェラルディン・チャップリン、エドワード・フォックス)を想起しつつ読めば、楽しさは三倍。
かつ、その幻の日本語吹替版(広川太一郎や高橋和枝さんら、亡くなった方もいる)を見ていると、さらにその倍たのしめるだろう。
個人的には、「視点」をどうしぼるか切り替えるかで光景が変わるという好きなタイプのミステリーで、傑作『葬儀を終えて』と同種のサプライズもあった。
戦後イギリスの田園に戦後都市文化や「アメリカ」がやってきている、という風俗小説の文脈でも読める。
キャメロンのシャるロット
★★★★★
ミス マープルものでは、最も重い話題を扱っている。
最終結末は想像だにしなかった。
アガサクリスティらしい犯人に至る道筋。
ミスマープルらしい人間性に訴えた論理展開。
どれをとっても、一流の作品である。
イギリスの古い文化を楽しむのも本シリーズの利点だと思う。
「クリスタル殺人事件」として映画化された
イギリス文化とアメリカ文化
★★★★★
ミス マープルものは、イギリスの文化、風土とを知るのによい。
ミス マープルものでは、最も重い話題を扱っている。
最終結末は想像だにしなかった。
アガサクリスティらしい犯人に至る道筋。
ミスマープルらしい人間性に訴えた論理展開。
どれをとっても、一流の作品である。
イギリスの古い文化を楽しむのも本シリーズの利点だと思う。
「クリスタル殺人事件」として映画化された
本書、「鏡は横にひび割れて」は、古風なイギリスだけでなく、アメリカ文化が入ってきたイギリスの混沌とした状況を指し示しているかもしれません。