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愛の旋律 (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)

価格: ¥987
カテゴリ: 文庫
ブランド: 早川書房
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英語の題名はGiant's Bread「巨人の糧」。 ★★★★★
アガサクリスティではなく、メアリウェストマコット名の作品。

英語の題名はGiant's Bread「巨人の糧」。

幼馴染と男女の友情、従姉妹兄弟と叔母・叔父。
母親と父親。戦争と平和。
イギリスとドイツ。ユダヤ人とロシア。
音楽と美術。ピアノとオペラ。
相対する様々な関係が織り成す物語。

主人公も、男からその妻。戦士したはずの夫と遷ろう。

未完の肖像、春にして君を離れ、マン島の黄金
など、ミステリでない作品の方が、好感が持てた。

ただし、アガサクリスティの作品だと知らなかったら、読まなかったかもしれない。
天才音楽家の半生 ★★★★★
 メアリ・ウェストマコット名義で書かれた、クリスティー初のロマンス小説。
 天才音楽家ヴァーノンの半生を軸に、5人の男女のさまざまな愛の形を描いている。本書の原題は「巨人の糧」という意味を持っているが、この「巨人」とは、天才音楽家ヴァーノンのことであり、矮小な人間達のことであり、芸術そのもののことでもある。
 ミステリにとどまらないクリスティーの才能を味わえる傑作。
数奇な運命に翻弄される天才音楽家の一生を描いた、意欲的な問題作 ★★★★★
幼い頃、奇妙な音を発するピアノを「獣」として恐れ(この「獣」に対する言い知れぬ恐怖が、全編を通じたキーワードでもある)、自他共に認める音楽嫌いのまま成長した主人公ヴァーノンは、青年となったある日、従妹のジョーの身代わりに、無理矢理、行かされたオーケストラコンサートで、突如、音楽の持つ素晴らしい可能性に目覚め、作曲の勉強を始めることになる。

そんな中、ヴァーノンは、見違えるほど美しく成長した幼馴染のネルと再会し、彼女との結婚に向けて突っ走るのだったが、貧乏の惨めさを味わってきたネルは、ヴァーノンに対する愛情と、誠実な金持ちの男との結婚話の間で激しく揺れる。一方、ヴァーノンも、あるパーティでオペラ歌手ジェーンに出会い、次第に彼女の危険な魅力にも惹かれていくのだった…。

この作品は、真実の音楽と愛を求めながら、自らに因をなす数奇な運命に、二人の女性を巻き込みながら翻弄されていく天才音楽家ヴァーノンの一生と、二人の女性それぞれの女の愛の在り方を描いた、意欲的な問題作だ。

おそらく、アガサの全長編小説の中でも最も規模が大きいはずであり、旧文庫版より活字が一回り以上大きくなったことによる100ページ以上のボリューム増も手伝い、643ページにも及ぶ大長編となっている。しかし、アガサ特有の軽いタッチの筆運びと、スピーディな場面転換を軸に、ヴァーノン、ジョー、セバスチャンの幼馴染三人同士の変わることのない友情や、生き方に対する価値観の相違によるジョーとセバスチャンの間のかみ合わない愛のエピソードもちりばめながら、後半の波乱の展開からミステリ顔負けのアッと驚くどんでん返しの壮絶な結末まで、長さ、退屈を感じさせることもなく、グイグイと読者を引っ張っていく。

アガサを偉大なミステリ作家としてのみ片付けるのは、もったいない。そう感じさせる好著である。

ジェーンがかわいそう! ★★★★★
かなり分厚ったので最初は敬遠していたのですが、読んでみたら一気でした。女二人の間でゆれ動く主人公ヴァーノンには、はっきり言って最初から最後までかなりいらいらさせられましたが、最後に達観してくれたのでよしとしましょう。個人的には彼は「終わり無き夜に生まれつく」の主人公に似ているような気がする。ヴァーノンより8歳年上のジェーンはクリスティが好んで描くタイプです。他のキャラクターもいきいきしてとてもいいです。恋愛物を書きつつも、ミステリ作家らしく最後にはあっと言わせてくれました。といいつつ、ここまで読むのにかなりフラストレーションたまりました。でも読後感がとても良いというか、考えさせられます。結末には割り切れないものを感じつつとても感動しました。是非お勧めします。