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残像に口紅を (中公文庫)

価格: ¥780
カテゴリ: 文庫
ブランド: 中央公論社
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消えゆくは 音と世界と いろは歌 ★★★★★
「いろはにほへと ちりぬるを〜」

誰もが知っているいろは歌だが、最初にこの歌を詠んだ作者については諸説が挙
げられている。それは別の話なので省く。

古人は全ての仮名を使って(ん_についての言及は避けよう)いろは歌を詠んだ
が、筒井康隆はその逆に挑んだ。

全ての音が、徐々に消えていく。
そしてその音を持つもの達も、存在しなくなる。

初めは緩やかに。読者にはその異変に気づかせる事も無く。
何かが変なのだが、得てして変化の渦中に居る者にとっては、それが緩やかなも
の程気付きにくいものである。

では、異変を感じ取った時には?
残された世界は?


日本語圏でしか堪能できないのが非常に残念だが、日本語を読み書き話す人には
是非読んで欲しいとさえ思う。個人的には、日本文学史上に残る傑作だと思う。


この作品は文章での表現について納得できない制限を感じた筒井氏だからこそ創
り得た作品だと思う。
いろは歌同様、以降の作家が同様の技法を試みても、二番煎じと取られかねない。

この本はエンターテインメントとして勿論楽しめるが、読後に語彙論について考
えた人も少なくないだろう。
小説(現実)の虚構性、筒井の異常なまでの言語感覚、反骨精神が楽しめる秀作 ★★★★☆
筒井の「現実=虚構」と言う持論と卓抜した言語感覚を活かした奇想天外な実験小説。「言葉狩り」への反骨精神もあるのか、作家である主人公がこの世から文字が段々と消えていく様を"小説"とした描いたもの。文字が消えると、その文字を使用した名前を持つ人間、物質も消える。

この趣向が分かった際、ドタバタに逃げるしかないと予想したが、どうしてどうして。消えた文字が少ない間は、同時に消えて行く家族への感傷小説(題名は娘への想いを綴ったもの)。文字数が1/3程度減った段階で、筒井には珍しい情交シーン。文字数が半分前後まで減った時点では、文壇批判と自伝。本当に使用可能な文字が減っているのかと疑うほどの自然な文体で驚かされる。自伝の途中で、残っている文字数が1/3程度になって、流石に同じ単語や同音異義語が多くなり、文章に不自然さが見られるが、これが歪んだ過去と共鳴し、読む者に不思議な印象を与える。それにしても、普段は自伝や情交シーンを描かない筒井がこうした実験小説の中でそれを試みる点にチャレンジ精神を感じる。ここまで来ると、もう最後はどうなるかと興味津々。残り10文字程度で、主人公が丘の上の建物に登って景色を俯瞰した感想を述べる辺りは圧巻。よくもここまで、単語が残っていたと感心する程。消して行く文字の順序はどうやって決めたのだろうか ?

小説(現実)の虚構性、筒井の異常なまでの言語感覚、反骨精神が楽しめる秀作。
よく意味のある文書になっているものだ ★★★★☆
使える文字が少なくなってゆく中での実験小説

まるで筒井自身のような小説家が私小説を書いているような
内容で、すこしづつ使える文字(音)が無くなってゆく中で
表現しようとしている小説である.目次も第一部〜第三部と
3つだけで目次の意味をなさないし、あとがきなどの解説も無い
本当に本文だけの小説である。しかも単行本であると、小説なのに
袋とじはあるわと、とても実験的である。

このような小説に一貫した内容をもたせるのは無理で、冒頭にも
最後の方はドタバタになると書いてあったが、意外と最後の方まで
意味の通った文章ですごいなと思った.また、最初に「あ」が消えているはず
なのに、まったくどこに消えているのかわからないぐらいすごい本でした。

悲しきエンターテイメント ★★★★★
言葉が消える。
すると、人が、ものが、残像を残して消えていく。

最初はわからない。
消えた文字探しをしたりして、おもしろがる。
それもだんだん強がりに過ぎなくなって、やけっぱちになったり呆然としたり。
そして言葉がなくなって不便さもきわまり、さて行き着くその先は。

言葉が不自由になるにつれて、文章としては滑稽で笑いを誘うのに、その心は悲しみに暮れている。
このギャップが、泣き笑いを誘う。
不自由な言葉の中では、エロティックなシーンでも、楽しいような脱力するような、奇妙な感覚を呼び起こす。

まさに悲しきエンターテイメント。
読めば読むほど、題名の秀逸さに驚かされる。
文字が無くなっていく ★★★★★
 「もし世界から文字が一つずつ無くなっていけばどうなるだろう」

 誰もが思いつきに留めてしまうものを実際に長編小説に仕上げてしまうのが筒井康隆である。漫画、「幽遊白書」で話せる文字が一文字ずつ消えていくというのがあったが、この作品へのオマージュだろう。内容はというと、ストーリーに味付けは殆どなく自分自身の生活に根ざしたものである。消えていく文字、消えていく登場人物への緩やかな困惑と哀愁があり、この作品は断筆前の世の中への憤りから生まれたものなのだろうかと思ってしまう。途中内観に似たような自分語りも含まれ、この小説は本当にアイデアひとつで生まれたものであると感じる。「残像に口紅を」このタイトルは氏の小説の中でも秀逸である。